休眠するボラティリティ
デジタル資産市場は新年を迎えた...依然として眠ったままで。12月12日(WoC50、2022年)のニュースレター最終号以来、市場は我々が離れた時と同じレベルのままである。
このような状況のもと、Glassnodeチーム一同は皆様がリフレッシュし、穏やかな休暇を過ごされたことを願いつつ、2023年の「今週のオンチェーン」の連載を再開したいと思う。
めったに見られないことだが、ビットコインは3週間以上にわたって557ドルの価格帯内で取引され、最高値(16.9kドル)は16.4kドルというレンジ内の安値からわずか3.4%上回っただけである。通常、年末年始はどの市場も閑散とするものだが、今回はデジタル資産分野も例外ではなかった。
今年最初のニュースレターは、以下のトピックを取り上げる:
・歴史的に、爆発的な市場の動き(両方向)に先行する極めて低い実現ボラティリティ。最も最近である2018年11月および2019年4月の例。
・BTCとETHにおけるオンチェーン活動が軟調で、同時に市場全体のボラティリティが低く、新年のベースラインが弱くなっていること。
・2022年が資本損失に関して、これまでで最も深い弱気市場の1つであることを明らかに示している実現総額のドローダウン。
🪟本レポートで取り上げたすべてのチャートは今週のオンチェーンダッシュボードで見ることができる。
🔔本編で紹介したポイントは、Glassnode Studio内で設定することができる。
🏴☠️今週のオンチェーンは、スペイン語、イタリア語、中国語、日本語、トルコ語、フランス語、ポルトガル語、ペルシャ語、ポーランド語、アラビア語、ロシア語、ベトナム語、ギリシャ語に翻訳されている。
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ビットコイン市場はボラティリティの高さで悪名高いが、それにもかかわらず、年末年始は例外的に静かであった。先月のBTCの実現ボラティリティは24.6%と数年来の低水準まで低下し、同様の水準(🟦でマーク)は滅多にない。過去のすべての例では、はるかに高いボラティリティ環境に先行して起こっており、ほとんどが高値で取引されていたが、たった1件(2018年11月)のみが劇的に安値で取引されていた。
・BTC価格が5ドルから14ドルの間であった2012年から2013年における初期の強気相場。
・2015年の弱気相場後期と2016年の上昇相場に至るまでのいくつかの段階。
・2018年11月、1ヶ月で-50%のドローダウンを記録する直前。
・2019年4月、4.2kドルから2019年7月に記録した14kドルのピークへ上昇する前。
・2020年7月、2020-21年の上昇相場となった64kドルに至る前。
ETHの歴史的なレベルの閑散期はさらに少なく、月次の実現ボラティリティは39.8%まで低下している。また、ビットコインと同様に市場のボラティリティが低い時期の主な事例は、すべて極端に高いボラティリティの前に先行しており、2018年11月(-58%の売り相場)と2020年7月(2020-21年の強気相場)が挙げられる。
弱いビットコインのベースライン
オンチェーン活動のスペースに焦点を移すと、FTX騒動の後にビットコインの新規アドレスの短期的な爆発的な増加が発生したが、その後著しく冷え込んでいることが分かる。新規アドレスの月平均🔴は年平均ベースライン🔵に向かって戻っており、ネットワーク利用率がまだ確信的かつ持続的な回復を確立していないことが示されている。
オンチェーン活動指標のモメンタムは、ネットワークにおけるファンダメンタルズの回復を監視する強力なツールであり、2019-20年の期間は過去の事例として重要である。
🗜️ワークベンチのヒント:ワークベンチのコンストラクションとして利用可能な同様のモメンタム指標がいくつかあり、「経済指標」の下にリストアップされている。
🔔 ポイント:新規アドレス(30D-SMA)が405k/日を下回ると、オンチェーン活動の悪化を示唆し、負のモメンタムへ反転する可能性がある。
この短期的なアドレス活動の爆発的増加にもかかわらず、ビットコインネットワークによって処理される総額は急落している。1日の送金量は、2022年第三四半期の〜4000億ドル/ 日から、今日ではわずか58億ドル/ 日にまで激減している。
これは、1日の決済量が強気相場の2020年以前のレベルに戻り、ネットワーク上に流入していた機関投資家規模の資本が排除されたことを大いに示している。
このことは、送金額の相対的な内訳にも表れており、1,000万ドル以上の取引額の占用率がこの減少の主な原因となっている。大口取引は、FTX崩壊以前は42.8%であったのが、現在ではわずか19.0%にまで低下している。
このことは、機関投資家規模の資本フローが大幅に低迷していることを示唆しており、おそらくこの層の間で深刻な信頼の揺らぎが起きているのだろう。また、悲しいことに、FTX/Alameda社に関連する疑わしい資本フローが排除されたことを反映しているのかもしれない。
ビットコインのブロックスペースに対する需要は引き続き弱く、ビットコインの手数料市場に対する上昇圧力はごくわずかである。マイナーの収益の4年Zスコアは、まだプラス領域に戻るような目立った進展はなく、平均より-0.67標準偏差のままである。
🗜️ワークベンチのヒント: このチャートは、移動平均sma(m1,1460)と標準偏差std(m1,1460)の機能を取り入れた4年Zスコアを使用している。
この静かなオンチェーン活動は、BTCとETHの両方において圧縮された米ドル建ての為替フローとして見ることができる。以下のチャートは、我々がモニターしている取引所エンティティに関連するビットコイン🟠とイーサリアム🔵の流入(+ve)と流出(-ve)である。
ビットコインの流入量は現在$350M~$400M/日であり、2021~22年全体で見られた数十億円レベルには程遠い。また、注目すべきはETHの取引所フロー規模の拡大で、2021年5月までの占有率は30%に過ぎなかったが、現在は42%に拡大している。なお、ここでのETHの占有率は、USDの取引所フロー(流入と流出)の合計を考慮し、ETH /(BTC+ETH)で計算している。
イーサリアムは静かなまま
ビットコインネットワークだけでなく、イーサリアムチェーンで支払われる平均ガス価格もサイクル最低レベルに近い状態が続いており、オンチェーン利用が極端に少なくなっている。9月以降の平均ガス価格は16~23Gweiの間で推移しており、これは2021年6~7月の調整時、およびCOVID市場パニック直後の2020年5月に見られた水準である。
🔔 ポイント: 平均ガス価格(7D-SMA)が30GWEIを突破した場合、オンチェーン活動の増加を示唆し、イーサリアムのブロックスペースへの需要が高まることを示している可能性がある。
ガス消費量を分野別に分類すると、いくつかの分野では相対的にガス消費量の占用率が低下していることが分かる。MEVボット、ブリッジ、DeFiプロトコル、ERC-20トークンである。2020年9月から2021年9月にかけて、これら4つの分野は合計でガス消費量の45.5%を占め、さらにDeFiプロトコルがその大半を占めていた。
しかし、現在では、これら4つの分野はピーク時の半分以下となり、ネットワークガス消費量の占有率は22.6%である。
最近において活気と注目を集めていた分野はNFTであり、2022年を通してガス消費量の大半を占めており、最近はその割合が13%から22%に増加した。
概して、主要なNFT市場とプロジェクトは依然としてイーサリアムのメインチェーンを土台としている。今のところは、既存のNFTがブリッジや他のチェーンに向かった目立つ移行は見られない。これは、2022年を通して注目されたいくつかのブリッジにおけるハッキングや、現在のメインチェーンのガス料金の低さによるものである可能性がある。
実現したドローダウン
実現総額は、オンチェーン分析において最も重要な指標の1つであり、デジタル資産における資本の流入と流出を監視するための洗練されたツールとして利用される。基本的な前提として、コインが取引される時にその時点の価値がプライススタンプされることで、時価総額のように(サトシのように)長く失われたコインをスポット価格で評価することを避けて評価されている。
完全ではないものの、実現総額は真の資本流入を測定し、資産間の評価を比較するための優れたツールの1つであることは間違いないだろう。このツールは失われたコインを取り除き、また回転売買の売買高(同じコインが反復に取引される)を部分的に考慮することで、市場による真の投資価値をより良く反映させている。
これを見ると、ビットコイン実現総額はATHから-18.8%下落し、ネットワークからのネット資本流出額は-884億ドルに相当する。これは相対的に歴史上2番目に大きな減少であり、米ドルの実現損失の点では最大である。このことは、実現総額は2021年5月のレベルまで戻り、2021年下半期の2番目ピークを通じて投資されたすべての価値が一掃されたことを意味する。
イーサリアムの実現総額は、2022年1月につけたATHから-29.2%減少し、さらに相対的に大きなスケールで下落している。イーサリアムの投資家は、2022年の間に合計-671億ドルのネット実現損を確定させたことになる。
これはまた、米ドル建ての実現損失ベーシスで史上最悪の弱気相場となっているが、相対的な規模では35.8%のドローダウンであり、2018-19年の弱気市場には追い越されてない。
🗜️ワークベンチのヒント: これらのドローダウン指標はいずれも、指標m1(例)の史上最高値をモデル化したcummax(m1)関数を使用して構築されている。
最後に、時価総額における優位性に関する前述したいくつかの欠点に対処することを目的とした、市場の優位性に対する新しい解釈で締めくくる。広く使われている「ビットコインの優位性」指標の原則的な問題は、比較的流動性の低いトークンの時価総額が操作されやすい(FTTやFTXエンティティによってサポートされている他のトークンのように)ことである。そのため、大規模で流動性の低いステーキングトークンを持つエンティティは、紙面上では過大な評価額を持っているように見え、根本的な市場の実態とは大きく乖離することになる。
以下のモデルは、より伝統的な時価総額の優位性と対をなす実現総額の優位性を最も単純に実装したものである。これは、2つの主要かつ最も流動的なデジタル資産であるBTCとETHにおける相対的な構造的資本の流入/流出を追跡するように設計されている。
このツールと原理は、実際の資本フローをよりよく反映し、非流動的供給(確定していないトークンの割り当て、プロトコルの金庫、または失われた供給など)を割り引くことで、コインやトークンを任意のバスケットとして適用し優位性の構造的変化を追跡することができる。
サマリーと結論
2022-23年の休暇期間は歴史的に閑散としており、そのような状態が長く続くことは稀である。過去にBTCとETHのボラティリティがこれほど低くなったときは、極めて不安定な市場環境が先行しており、過去の例ではより高値でも安値でも取引されていた。
2つの主要通貨におけるオンチェーン活動は、FTXの後に短期的に盛り上がったものの、依然として極めて低調である。オンチェーン活動と実現総額のドローダウンの両方から見ると、2021年下半期における過熱状態はシステムからほぼ排出されたと言ってよいだろう。このプロセスは投資家にとって痛みを伴うものであったが、市場のバリュエーションは基本的なファンダメンタルズに近いものになった。
また、2023年に訪れる全ての出来事を「今週のオンチェーン」で記録していくことを楽しみにしている。
免責事項:このレポートは、いかなる投資アドバイスも提供するものではありません。すべてのデータは情報提供のみを目的として提供されています。ここで提供された情報に基づいて投資判断を行うことはできず、投資判断はご自身の責任で行ってください。
製品アップデート
12月は、市場にとって比較的静かな月であったものの、Glassnodeチームは、新しいディスカバリーページ機能、4件の新しいダッシュボード、23件のワークベンチのコンストラクションを提供するべく準備している。詳細については、12月のサービス更新を参照してほしい。
多言語チャンネル
新しいソーシャルチャンネルが立ち上がったことを喜ばしく思う。
・スペイン語(アナリスト: @ElCableR, Telegram, Twitter)
・ポルトガル語(アナリスト: @pins_cripto, Telegram, Twitter)
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