横ばいの動きで明けた新年

 ビットコインは、マクロの動的供給上は強気基調であるにもかかわらず、ブロックスペースでの需要は乏しく、静かに新年を迎えた。

横ばいの動きで明けた新年

 

 週刊オンチェーンニュースレター(2022年第1週目)

 読者の皆様、明けましておめでとうございます。Glassnodeチームは、皆様が安全で楽しい年末年始を過ごされたことを願っている。またビットコインもお誕生日おめでとう。13年前、サトシ・ナカモトは最初のビットコインのブロックを採掘し、以下のメッセージがタイムスタンプとしてコインベースのトランザクションにエンコードされた:

 The Times 03/Jan/2009 財務大臣の2度目の銀行救済が間近に
 
 2021年が終わるとともに、ビットコイン市場の活動も落ち着き、取引高は減少、価格はいくぶん横ばいとなった。価格は11月下旬から同じレンジでの取引が続き、今週は高値51,654ドル、安値46,197ドルの間を行き来している。

 多くのオンチェーン指標において、供給はやや強気基調であるにもかかわらず、全般的に活気がない。コインはますます流動性が低下し、休止状態のウォレットに移行し続けており、投資家の収益性と循環的な指標はより弱気な状態を描いている。目下は強気と弱気の両シグナルが均衡しているため、2022年初頭は横ばい状態が続くと予想される。

今週のオンチェーンダッシュボード

 今週のオンチェーンニュースレターでは、すべてのチャートが表示されるライブダッシュボードをご用意しています。このダッシュボードと対象となるすべての指標は、毎週火曜日に公開されるビデオレポートでさらに詳しく解説しています。Youtubeチャンネルビデオポータルでは、より多くのビデオコンテンツや指標のチュートリアルをご覧いただけます。

オンチェーンの動きは依然として動意に欠ける

 このニュースレターで評価する最初の指標は、オンチェーンでの活動に関連するものである。一般的に、強気相場の勢いは大抵コインの購入や売却、新しい所有者への譲渡によりブロックスペースの需要の増加を伴う。逆に、弱気相場では一般的に、新規ウォレットの減少、取引需要の減少、ネットワーク利用率の低下が見られる。

 残高がゼロでないウォレットアドレス(以下ノンゼロアドレスと表記)の数量は、ビットコインの長期的な需要を評価するために利用できる指標である。昨年は合計746.2万個のノンゼロアドレスのウォレットがネットワークに追加され、前年比23.2%増となった。このうち141.5万個は10月の過去最高値以降に追加されたもので、年間総数の18.9%を占めている。

 直近のノンゼロアドレスの過去最高数である3960万個は、2017年の強気相場の終わりに記録したピーク時よりも40%増で、過去5年間にわたり利用者数が上昇し続けていることを示している。

ライブチャート

 日次のアクティビティを見ると、オンチェーンのアクティブなエンティティ数は、ようやく275k/日を突破することができた。下図の赤いハイライトでは上昇する“弱気相場チャネル(bear market channel) ”が見て取れる。これは、価格が下落し相対的な関心が低下している期間においても、ネットワークユーザーが持続的に増加していることを示している。

 2017年と2020-21年の強気相場では、このチャネルと比較するとオンチェーンの動きが顕著であることが目立つ。しかし最近の状況は2019年4月から8月にかけて発生した「ミニブル」に近いように思われる。これら2つの期間は、深い調整と大規模な投げ売りイベントを経たものの、その後の上昇で本格的な強気相場に十分な勢いを生み出すことができなかった点で類似している。

 2019年のラリーは最終的に2020年3月に最後の投げ売りが発生するまで、最高潮に達し、9カ月にわたる長い下落に向ける横ばいレンジに入る。

ライブチャート

 取引件数も同様、2017年と2020-21年の強気相場ではっきりと目立ち、ピーク時には1日あたり30万件以上の取引が記録されている。2019年4月~8月と2021年9月以降の現在の市場には、類似点を見出すことできる。どちらのケースでも、最初の活発な動きが価格の上昇を支えたものの、有用な勢いを維持することができず、取引件数と価格は共に増減している。

 ビットコインのブロックスペースに対する需要がさらに拡大するまでは、価格の動きはいくぶん平穏で、マクロ的には横ばいになる可能性が高いと合理的に見込まれる。

 2019年と2021-22年の期間において、市場構造の根本的な違いは注目に値する。2019年4月~8月のラリーは、Plus Tokenポンジスキームによるスポットのビットコインに対する急激な需要と、先物市場の動きをフェードアウトさせる多数のショートスクイーズと大きな関連性があった。現在の相場は、大きい積み増しを伴った7月と9月の安値を経た強いラリーを見せたと表現するのが最も適切である。このラリーは、マクロ経済の不確実性とインフレ懸念が市場に浸透したこととトレーディング企業が年末の利益を確定しようとしたことで、非常に好調だった10月の後に売られた。

ライブチャート

根本的な供給は堅調に推移

 弱気相場の特徴の1つは、実は供給力は堅調であることだ。上記のオンチェーン活動からは、リテールや市場関係者の需要がかなり低調であることが分かるが、コインの休眠状態は依然として印象的であり、一層賢明で忍耐強い資金が蓄積されている兆しが残っている。

 2020年12月は、2021年第1四半期の非常に強力な価格パフォーマンスの出発点となり、ビットコインは前サイクルの20kドルの過去最高値を突破、4月には64kドルを超えるまでに押し上げた。

 1年超の供給量の指標を見ると、2020年後半に蓄積されたコインの大部分が今日まで使われていないままであることがわかる。2021年10月以降は68.2万 BTC以上が1yr+ age band (訳者記:1年以上使われず経過したコインの数を表した帯。以下グラフ参照)にあり、流通しているコイン供給量の3.3%を占めている。いまやコイン供給量の57%以上が1年以上使われず経過しており、2019年4月の急上昇時に見られた51.5%とほぼ同じである。

 2021年のボラティリティを考えると、これほどの増加と年中保有されていたコインの割合の大きさは非常に注目に値すると言えるだろう。

ライブチャート

 長期保有者(LTH)の供給も、10月と11月の2回の過去最高値をつけた後は非常に緩やかな流通期間を経て、一時的な停滞状態になっている。これは、長期保有者の消費が減速し、HODLerあるいはこの価格での買い手となる可能性が高くなったことを意味する。これは、市場の信憑性に対してもう一つの建設的な見方を提示してくれている。

 長期保有者は10月以降に約15万BTCを消費しているが、これは保有残高全体のわずか1.11%に過ぎない。この間に急激かつ持続的な調整があったことを考えると、この消費ペースの鈍化は注目に値する。なお、これは2021年の大規模な蓄積フェーズに続くもので、3月以降に242万BTC以上が長期保有者のウォレットに移行し、残高は22.1%増加したことになる。

ライブチャート

 また市場が蓄積期(流動性が低い)または分配期(流動性が高い)といった、現在のコインの動的供給に対してより直接的に測る指標を使用してコインの流動性を評価することもできる。

 最後のアクティブに関する指標と、長期保有者による供給の指標の主な要素として時間(コイン年齢、または寿命)を使用するのに対し、我々の流動性および非流動性指標はウォレット支出のヒューリスティック(当社の方法はここを参照)を使用している。コインが取引履歴のないウォレットに移動した場合、それは非流動性(例えばドルコスト平均法戦略を行うHODLer)として分類される。逆に、よく定期的に利用されるウォレット(例:デイトレーダーや取引所のホットウォレット)は、流動的または高流動的のどちらかに分類される。

 2021年の最後の数ヶ月間は価格が調整されたにも関わらず、流動性ウォレットから非流動性ウォレットへのコインの移動が加速していることが以下に示されている。12月ではコインが50k~100k BTC/月の割合で非流動性のウォレットにますます移動しており、より大規模に蓄積される可能性が高いことを反映している。

ライブチャート

 全体で見ると、流動性と高流動性を合わせた供給量(ピンク)を抑え、非流動性の供給量(ブルー)が加速度的に増加していることが分かる。また非流動性コインは現在、総供給量の76%を占めており、価格に対し明らかな相関関係があることも見て取れる。現在の状況は、積極的なオンチェーンの動的供給と、弱気から中立的な価格の動きとの間の乖離を示している。

ライブチャート

 最後に、長期的なマクロトレンドについては、活動度指標から一致点を見出すことができる。活動度は、コイン供給の循環におけるコインデーの誕生とコインデーの消滅の相対的な成長を反映している。コインデーが多く生成されると、休眠と長期保有者が増加し、活動度は低下する傾向にある(ブルー)。逆に、特に早期参加者による流通ではコインデーは生成よりも破壊されること多く、活動度は上昇する傾向にある(ピンク)。

 活動度は、価格が調整されても、強い下降トレンドの中で現れる。これは弱気相場や蓄積期において典型的なもので、強気基調上にある弱気相場という解釈も加えられる。

ライブチャート

短期保有者の苦しみ

 動的な供給上では、より忍耐強いスマートマネーの供給は建設的であるように見えるが、現在の市場の大部分は含み損の保有資産である。長期保有者は自信を深めているように見えるが、彼らの仲間である短期保有者のオンチェーン原価よりも下回ったプライスで取引している。これらのコインは、売り圧力がかかりやすく、市場の回復の妨げとなる可能性が高い。

 実現価格は、各コインが最後にオンチェーンで使用された時点の価値を示す指標で、ビットコインの「蓄積された価値」を反映しており、コストベースの推定値でもある。下の図は、3つのコホートにおける実現価格を示している:

 ・短期保有者(ピンク):現在 $51.4kで取引されている。このコホートは含み損で構成されており、売りサイドの抵抗線となる可能性が最も高いことを意味する。

 ・市場全体(オレンジ):市場全体の実現価格は、現在 $24.4kで取引されている。一般的に、この実現価格はサポートされる信頼できる価格であり弱気相場の下限となるが、価格がこのレベルに達することは明らかに理想的ではない。

 ・長期保有者(ブルー):2021年上半期に高い価格で蓄積されたコインが使われておらず急騰した後は $17.7kで現在取引されている。この指標は、長期保有者が時間の経過とともにより高い下限値でビットコインを評価していることを視覚的に表していると考えることができる。

ライブチャート

 短期保有者コーホートについて、STH-MVRV指標は、過去の弱気期間に対する現在の含み損の苦痛の大きさを示している。STH-MVRVは現在1.0を下回って取引されているが、この事象は残念ながら2017年以降、すぐ終わりになる時期が極めて少ない。2018年、2019年、2021年半ばの弱気相場期はいずれも短期保有者が含み損の状態が続き、STH-MVRV値1が抵抗線として作用している。

 心理的には、これは新規購入者が“お金を取り戻した”ことを意味し、51.4kドルが注目すべき重要な水準となる。

ライブチャート

製品アップデート

 すべての製品アップデート、改善、指標やデータのマニュアルアップデートはすべて変更履歴に記録され、参照することができる。

 ・Glassnodeシステムステータスが利用可能になった。
 ・トランザクション、サイズ、コホート、ボリューム、および手数料に関する一連のMempool指標を追加した。
 ・ビットコイン取引所の指標にFTXを追加した。
 ・Binanceの取引所ウォレットを改善した。
 ・スタジオで cmd+k ショートカットを使用した新しいナビゲーションツールを追加した。