マーケットパルス:ビットコイン長期保有者はコインを売却しているか?
市場が直近の安値から上昇する中、ビットコイン長期保有者が総コストベーシス以上でポジションをクローズする機会を得ているかどうかを検証する。
マクロ環境におけるあらゆる不確定性にもかかわらず、暗号資産市場は7月中旬以降、有意な回復を経ている。ビットコイン価格は、200周移動平均線、長期保有者コストベーシス(LTH-Cost Basis)、市場平均コストベーシス(実現価格、Realized Price)を含む、心理的に重要な2つのレベルを取り戻し、一時的に~24kレベルをタッチした。
弱気相場におけるこのような衝動的な急反騰は、現在続いている好調なモメンタムの持続性に疑問を投げかける人も少なくない。このマーケットパルスレポートは、1,333.7万枚(79.85%)の流通供給を保有する長期保有者に重点を置いて、関係者の行動を追跡することを目的としている。
長期保有者コホートは、5月の初めから実質約222k BTCを分配しており、これは彼らの過去最高の保有量における約1.6%に相当する。
最近の上昇局面における長期保有者の行動は、2つの側面から検証できる。未実現ストレス(保有したコインの収益性)と実現ストレス(売却したコインの収益性)である。
LTHの供給量における未実現ストレス(LTH-MVRV)
ここでは、現在のスポット価格と長期保有者の平均取得価格を比較している。過去21日間を振り返ると、価格は長期保有者コストベーシス(LTH-MVRV>1)を取り戻し、長期保有者の潜在的なストレスは減少している。
長期保有者コストベーシスは現在22.6kドルで取引されており、執筆時の市場価格22.3kドルであることを考慮すると、このコホートは現在1%の損失を伴ってコインを保有していることを示している。
LTHの売却供給における実現ストレス(LTH-SOPR):
LTH-SOPRは、長期保有者の売却価格と平均取得価格との比率を測定する。
7月中旬以降、LTH-SOPRの週平均では長期保有者がコインを損失状態で売却していることを示している。価格が24kドルの水準で直近の抵抗線となった今、LTH-SOPRの週平均値は0.67となり、平均で33%の損失が実現することを示している。これは、現在の市場において長期保有者が損切りし続けていることを裏付けるものである。
過去21日間のスポット価格は長期保有者のコストベーシス(22.6kドル)より7%ほど高かったにもかかわらず、LTH-SOPRの週平均値(7日間移動平均)は、長期保有者が-11%から-61%の範囲で実現損を伴い売却したことを意味する。これは、2021-2022年の市場の高値近辺でコインを取得した長期保有者が、この上昇局面を通して主な売り手となり、2017-2021年サイクル(またはそれ以前)のコインをまだ保有している人々の大部分はじっと耐えていることを示している。
これに対し、過去3週間の長期保有者の行動は、79k BTC/月の割合で蓄積していたものから、最大-47k BTC/月の割合で売却するように変化している。驚くべきことに、このコホートは上昇局面の機会を見逃さず、過去21日間における供給量の0.3%にあたる41k BTCを費やした。(注:純売却=蓄積量 + 保有量 - 売却量、と定義される)。
長期保有者側から見た売却の重要性は、コインデーの消滅(CDD-7日間移動平均)指標の週平均における突発的なピークを辿ることによって強調できる。CDD-7日間移動平均は弱気相場のベースから1,380万コインデーまで上昇しており、最近の上昇局面は長期保有者にとって流動性を放出できる窓を提供したと言える。
マクロ的な観点から市場を見ると、投資家は売却したコインの利益と比較して、より大きな損失を実現している状態が続いている。最新の日次データでは、実現損失が1日当たり3億1,900万ドル、実現収益が1日当たり2億2,600万ドルとなっている。
実現損失が収益を上回る期間は、弱気市場の典型的な構造である。しかし、このバランスが逆転すると、需要と市場の回復を示唆することがよくある。
しかし、現状では、市場全体と特に長期保有者の両方による著しい売却がまだ残っているようで、彼らは市場が提供する流動性の出口を利用しているように見える。
サマリーと結論
スポット価格が平均コストベーシス(保有したコイン)を上回って取引されているため、長期保有者による潜在的な圧力はわずかに減少している。しかし、財務的な圧力が減少したにもかかわらず、長期保有者はコインを純損失を伴ったまま売却し続け、平均で-11%から-61%の損失を抱えている。
長期保有者、特に2021年から2022年にかけての市場の最高値付近でコインを蓄積した人たちからの売り圧力がまだかなりの割合を占めている。最近の上昇局面により、長期保有者は保有するコインの一部を実質「取り返す」、つまりコストベーシスで売却する機会を得ている。