潮流の変化
劇的に変動した1ヶ月間の価格の後、ビットコインはいくつかのコホートのオンチェーンコストベーシス上で調整している。-6.2%まで戻し週安値である$22.6kをつけたものの、現在のBTC保有者は平均的に含み益を抱えており、いくつかのマクロ規模におけるオンチェーン指標は、市場の流れが変化している可能性を示唆している。
今回は、最近の価格上昇に反応した売却行動の視点から、市場の全体の様々な面を考慮しつつ探ることにする。その目的は、マクロ的な潮流を見極めるための新たな行動パターンを見出すことにある。また、売却のインセンティブがHODLingの機会コストを上回り始めているのか(そしてこの変化をどのように見極めるのか)、さらに資本移動が始まる中で古い参加者と新規参加者の関係性も調査する。
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収益性への回帰
直近のサイクルで市場で確定した実現利益を分析することから調査を開始する。2020年10月以降は異常な金融政策に反応して利益確定が爆発的に増加したことが分かる。2021年1月にピークをつけその後大幅に減少し、その後2年間で2020年の水準まで戻ったことがわかる。
最近の値動きを見ていると利益確定の動きの復活が見られるが、2021-22年のサイクルを通じて経験した活発さに比べれば、その勢いはまだ弱い。
同期間において市場の実現損失は2021年1月以降に拡大し始め、2021年5月の売り相場で最初のピークに達した(歴史的な水準の弱気相場)。
しかし、現在の実現損のレベルは、サイクルのベースラインである1日約2億ドルに向かって低下しており、明確なキャピチュレーションイベント(例:LUNA / FTX)を除いて、全体的に損失プロファイルは縮小していることが分かる。
実現利益と損失との比率を見ると、それぞれの占有率が構造的に変化していることがわかる。2021年11月のATH後に値崩れした後、損失の占有率が高いレジームが続き、実現損益比率は1を下回るとともに毎回値動きがその後のキャピチュレーションに伴って深刻さが増している。
しかし、2022年4月の売り相場以降、初めて持続的な収益性を観測されており、収益レジームに変化の兆しがあることを示唆している。
🔔 アラートアイデア:実現損益率(7日指数平滑移動平均線)が1.0を下回ると、実現損失の占有率が大幅に高まり、コストベーシスの高いコインを保有する投資家の売却が増加することを示す。
ビットコイン売却リスク比率(Bitcoin Sell-Side Risk Ratio)は、実現総額(ネットワークにおける価値評価の指標)に対する総実現損益の割合を比較するために使用できる指標である。
この指標から見ると、実現利益と損失の合計は、資産規模に比べて相対的に依然として小さいままである。このことは、特に強気相場中に経験した高揚感やFTXのキャピチュレーションイベントと比較して、売り相場の規模はわずかであることを示している。
全体として、移動中のコインのほとんどは現在のスポット価格に比較的近い価格で取得されており、したがって大きな「実現」利確をしていないことを示している。
プラス圏に戻る
ネット未実現損益率(NUPL)は最近の急反騰により、ビットコインのスポット価格が広範な市場の平均取得価格より高くなったことを示している。これにより、市場は含み益のレジームに戻り、平均的な保有者はプラスに転じた。
過去のすべての弱気相場におけるマイナスのNUPLの期間と比較すると、現在のサイクル(166日)と2011-12年(157日)および2018-19年(134日)の弱気相場の間で歴史的に類似性があることが観察されている。2015-16年の弱気相場は特に際立っており、2番目の期間(2022-23年サイクル)の約2倍の長さの含み損レジームを経験している。
🗜️ ワークベンチのヒント: このチャートは、正と負の値の2つのトレースを同じ軸に描画しており、棒グラフを使用して領域を埋めることによって作成されている。
このように、市場が保有する含み益の合計とその年平均との比率から、回復しつつある市場におけるマクロ規模の指標を導き出すことができる。
最近の急激な値動きは、いくつかのオンチェーン・コストベーシスのモデルを超えて急反騰し、その結果、市場全体の経済的状況が大幅に改善された。現在、このモメンタム指標は均衡からのブレークポイントに近づいており、2015年と2018年の弱気相場の年からの回復に類似している。
この均衡点を上回ることが確認された場合、歴史的にはマクロ的な市場構造の転換と一致する。また、この均衡点を下回っている期間の長さは、主要な弱気相場と同様であることに留意してほしい。
🗜️ ワークベンチのヒント: このチャートでは、value_at(m1)関数のデフォルト設定を利用して、このモメンタム指標の現在値を返している。
SOPR (Spent Output Profit Ratio)指標のバリエーションは、任意の日において様々な市場のコホートによって確定された利益倍率を調査するために使用できる。
短期保有者のコホート🔴では、短期保有者SOPRが持続的に1.0を超えて取引されており、2022年3月以来の利益獲得の急増が見られることがわかる。これは、ここ数ヶ月の間に低価格で取得された大量のコインを反映している。
より広範な市場🔵もまた非常に深く長く、そして大きな損失が続いた後に回復し、利益を伴った売却へと戻ったことがわかる。
長期保有者のコホートを評価すると、LUNAの崩壊以来、持続的な損失状態が続いていることが確認できる。この9ヶ月間、このコホートは損失を出し続けているものの、長期保有者SOPRの潜在的な上昇トレンドが形成されつつあり、回復の兆しは見えている。
特徴の変化
調整済みリザーブリスク指標(Adjusted Reserve Risk metric)は、HODLerクラスの行動を文脈化するために使用できる。この周期性オシレーターは、売却のインセンティブと長期間の休眠コインによる実際の売却との間のバランスを定量化する。
・値が高いほど、価格とHODLerの売却の両方が上昇していることを示す。
・値が低いほど、価格とHODLerの売却の両方が減少していることを示す。
このオシレーターは平衡状態に近づきつつあり、トレンドの構造的変化が進行しているように見える(全取引日の55%が現在の値を下回っている)。これは、HODLingの機会コストが減少する一方で、売却するインセンティブが増加していることを示唆している。
過去にこの均衡位置を上回った場合、HODLingのレジームから利益実現が増加するレジームに移行し、古い弱気市場の蓄積者から新規投資家や投機家へと資金が回転することを歴史的に示してきた。
実現総額HODL波線(Realized Cap HODL Waves)を検証することで、この資本循環の命題に重みを加えることができる。ここでは、3ヶ月以下しか保有していないコインを分離し、2つの重要な観察に注目する:
・新規保有者が持つ富の割合は、わずかではあるが増加している。これは二元系であり、古い保有者から新規保有者に富が移動していることを示している。
・この変曲点の深さは、歴史的な前例と非常によく一致している。
次に、実現HODL比率(Realized HODL Ratio) を使って、上記の観測をさらに補足する。この指標は、1週間前のコインと1~2年前のコインの間で保有される富のバランスを比較し、マクロ規模のオシレーターを生成する。
・値が高いほど、新規購入者と投機家が保有する富が不釣り合いであることを示す。
・値が低いほど、長期的かつ確信的なHODLerによって保有される富が不釣り合いであることを示す。
実現HODL比率を評価する場合、一般的に絶対値よりも変化率とトレンドの方向性が重要視される。現在、丸みを帯びた底値の構造が見られており、富の純移動が起こるとともにトレンドは上昇に転じ始めていることを示唆している。
このような背景から、シングルサイクルの長期保有者(6ヶ月-2年)と最も若い短期保有者(1日-3ヶ月)の保有資産を比較するRHODL比率の新しいバリエーションを紹介したい。これは、サイクルの変遷に伴う資本回転の転換点を評価しようとするものである。
6ヶ月-2年の層から富が流出するのは、より高い年齢層へ成熟するか、コインを売却してコイン年齢を完全にリセットするかのどちらかである。現在、このRHODL比率の変化には大きく鋭い変曲点が見られており、前サイクルの長期保有者から新しい購入者層への大規模かつ急激な資本回転を示唆している。
このような市場現象は、過去の弱気相場でも一貫して発生おり、資本回転の大きな変曲点は、市場の性格や構造に大きな変化があることを示唆している。
サマリーと結論
長期にわたる厳しい弱気市場と連続するデレバレッジイベントに見舞われた後、完全に高揚感が一掃し、循環的な変遷が進行中である可能性が見られている。通常、このような時期は、合計損益の占有率における急激な変化によって中断されるが、それが現在起こっているように見える。
しかし、この傾向は期間や市場規模に対する実現損益の大きさから見て、まだ未熟である。WoC#45で述べたように、長期保有者から短期保有者への資本移動は、過去12ヶ月の間において持続的な傾向であった。長期保有者が(一般的には損失で)売却し続けているコインを短期保有者が吸収して資産が増加していることを見事に反映している。
市場は、弱気相場の後期から新しいサイクルの始まりへの過渡期にあると思われる。過去のサイクルを参考にすると、2015年や2019年など、前途は多難なものと思われる。これらの過渡期は、歴史的にマクロ規模で揉み合い相場が長く続き、通常は両方向において局所的に不安定な動きが散見されることが特徴である。
免責事項:このレポートは、いかなる投資アドバイスも提供するものではありません。すべてのデータは情報提供のみを目的として提供されています。ここで提供された情報に基づいて投資判断を行うことはできず、投資判断はご自身の責任で行ってください。
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