オシレーター指標の合致点から得た確信

 1ヶ月間に渡る調整の後、ビットコイン価格は待望の急反騰を経験し、週足のオープン価格を9%上回って終了した。20,781ドルで開始したあと、ピークである24.179ドルまで上昇し、週末に調整レンジにおける高値まで引き戻された。

 今回は以下のコンセプトを通じて、現在の相場上昇の持続性を評価する:

 ・供給の集中、テクニカル、オンチェーン価格モデルから注目されやすい価格帯を評価する。
 ・統計的に著しく過調整のレベルに達している多くの指標に対する市場の反応を評価する。
 ・モメンタムオシレーター(MRGOと移動平均線)による合流を評価し、上昇の強さを測る。


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HODLerによる供給の集中度合い

 2022年にビットコインの市場評価額が75%以上下落したことで、投機家はネットワークからほとんど追い出された(WoC 27で説明した)。この過程で、信念が弱い保有者から強い保有者へのコインの再分配が行われる。これはいかなる市場サイクルでも見られるメカニズムであり、コインをコールドウォレットで成熟させたり、より長い時間で投資するようなコストに鈍感なHODLerに資産が移動する。

 この現象は、短期保有者と長期保有者のコホートで分けた未使用実現価格分布(URPD)を通して観察できる。なお、短期から長期の保有者の閾値(155日)は、価格が40kドル前後で取引されていた2月中旬に遡ることに注意してほしい。

 ・20kドル台には、大量な短期保有者のコインが引き寄せられている。これは、キャピチュレーションした売り手から、新しい楽観的な買い手へと所有権が大幅に移った結果である。
 ・短期保有者の需要ノードは、40kドル、30kドル、20kドルという心理的な価格レベルにも見られる。注目すべきは、これらの供給の多く(上記のLTH供給を含む)が、取得時の価格レベルを50%以上下回っているにもかかわらず、キャピチュレーションしていないことである。これは、比較的価格に敏感でない買い手が所有していることを示している。

 今後数週間のうちに、STHが保有する4~5万ドルレベルのコインがLTHに成熟し始めれば建設的であると思われ、この主張を裏付けることができる。

グラスノードエンジン提供のライブ指標

 コホート年齢別のURPDを見ると、コインが最後に取引されてからの時間別に分けたビットコイン供給の分布を観察できる。基本的なポイントは2つある:

 ・20kドル台で最近の膨大な取引が行われており、20kドル台で需要が高まっていることがわかる。この価格帯には第2位と第4位のURPDノード(約90万BTC)があり、この価格帯内で大規模な所有権の移動があったことを示している。
 ・成熟度はATHから現在の市場価値まで低下しており、下降トレンドの持続時間を反映していることがわかる。6ヶ月以上前に蓄積された大量のコインは、大きな含み損を抱えており、売却される気配がないように見える。

 どちらのURPDの形式も、損失を抱えながらもコインを成熟させるHODLerによる供給がますます大きな割合を占めていることが示されている。彼らの需要の流入は、心理的な20kドル、30kドル、40kドルの調整ゾーンが中心である。

 しかし、この過程で、多くの長期保有者が売り手に回っており、URPDチャートは本質的にはこれまでの「ほとぼりが冷めた後」の状態を表していることに注意してほしい。さらに、これらの高い供給の集中ノードが、市場が高値への回復を試みる際に強固な抵抗線として機能する可能性もある。

グラスノードエンジン提供のライブ指標

過度な拡張からの反発

 今週の相場はポジティブな反応を見せており、直近の調整ゾーンを上抜けた。これは多くの指標が統計的に極端な偏差に達していたことなどが短期的かつ大幅に行き過ぎた調整であるとみなされたことによる。

 これは市場全体で急速にデレバレッジが進み、多くの金融機関や投資家、取引所がWoC25:ドミノ倒し:全面的なキャピチュレーションWoC23:マイナーの利益はストレス下にで見られたように、裁量あるいは強制的に売り手として担保を清算したことが大きな要因となっている。

 メイヤーマルチプル(Mayer Multiple)は、スポット価格と200日移動平均線の間の乖離を評価するために利用できる。200日移動平均線はマクロ的な強気トレンドと弱気トレンドを区別するツールであり、伝統的なテクニカル分析として広く使用されている。

 今回の極端な価格調整では、メイヤーマルチプルは0.55以下に達しており、市場が200日移動平均線に対して45%のディスカウントで取引されていることを示している。このような現象は非常に珍しく、4,186日の取引日のうち127日、合計3%しか発生していない。

ライブワークベンチ

 MVRV指標は、スポット価格と市場の総コストベーシスの間における乖離を評価するためのもう一つの強力なツールである。今週、BTC価格が実現価格を上回ったことで、再び市場全体が全体的に利益を得て短期的な見通しは上向きに変化しており、参加者はあらゆる形での反騰を熱望している。

 ビットコインは資産として成熟し続けており、近年は機関投資家や国家レベルにおいても関心を集めている。したがって、一般的な半減サイクルを取り入れる一方で、ダイナミックな経済情勢を考慮し、4年ローリングZスコアを使用してデータを正規化している。

 ・歴史的に標準偏差が-1以下の場合、底値圏の形成が確認されやすい。これまでのところ、2015年、2018年、2020年3月のフラッシュクラッシュを含むすべての弱気相場サイクルの底値圏において過小評価のシグナルが出ている。
 ・6月の値動きで、4年ローリングZスコアの値が過去最低となり、統計的に極端な偏差に達したことが示唆されたことで、現在の上昇基調に拍車をかけている。

ライブワークベンチ

 コインデーの消滅(CDD)の概念を導入し、比較的古いコインや若いコインが売却行動を支配している期間を測る指標として使用することができる。コインが1日使われないと、そのコインのBTC量に相当する1コインデーが蓄積される。コインが売却されると、その蓄積された時間は消滅したとみなされ、CDDモデルが生成される。このツールは、毎日移動するコインの時間加重による経済価値を効果的に捉えている。

 ここでは、月平均のCDD値が年平均より高いか低いかを比較している。

 ・下のチャートの青いゾーンは、最近の古いコインの売却が年間平均を上回っている期間を示している。これは、強気相場(利益確定)だけでなく、弱気相場(パニック売り、資本保全)でも見られる典型的な現象である。

 このことから、価格が下落する中、古いコインを保有する長期投資家によってより成熟したUTXOの売却が加速されたと推測できる。

ライブワークベンチ

 MVRV Zスコア(青色)は、コインデーの消滅(CDD)オシレーター(オレンジ色)と組み合わせて使用することができる。これによって総合的な収益性(MVRV)と、実際の売却行動(CDD)を支配するコイン年齢層の両方を観察するモデルを作成する。

 ・市場が全体的な損失(MVRVが1以下)にあるときにCDDオシレーターの値が1を上回ると、一般的にキャピチュレーション期間と一致する。
 ・CDDオシレーターの値が1より高く、市場が全体的に利益を上げている場合(MVRVが1より高い)、通常はトッピング構造と一致する。

 このモデルが示すのは、長期投資家がより多くのコインを売却すると同時に、市場に同等の含み損が蓄積している場合である。このことからわかるのは、長期投資家は5月から7月にかけて、相当なキャピチュレーションを経験した可能性が高いということである。

ライブワークベンチ

 ここで、長期保有者の実際の売却行動を調べることで、この観測を正式なものとすることができる。長期保有者(LTH)は、しばしばHODLerクラスと同義であると考えられ、統計的に強い信念を持つ参加者を表している。下図では、直近の月次での売却の収益性を、年間平均と比較している。

 ・月次収益性が年次収益性を上回る場合(オレンジ色)は、LTHがより多く投資し大きな利益を得ており、市場は過熱状態に入っている。
 ・月次収益性が年次収益性を下回る場合(赤色)は、一般的に弱気相場モメンタムが拡大し、LTHコホートによって損失がロックされていることを示唆している。

ライブワークベンチ

 現在の市場において、長期保有者の直近の収益性は、ほぼ400日間連続で年間のパフォーマンスを大きく下回って推移している。この下落は、2018年の弱気市場における安値と同様の期間と深さに達しており、上記の議論をさらに強調付けている。

 このような統計的に大幅な平均値からの乖離は、前例のないクリプトネイティブの機関投資家に対して強制的に執行された売りによって一服したため、急反騰の波は高い確率で発生した。次のセクションでは、現在の上昇モメンタムの継続に必要な条件と否定につながる条件を調査する。

回復のための抵抗線

 4月以来初めての反騰続く中、過去の弱気サイクルで抵抗線となった様々なモデルを評価する。マクロ的なテクニカルの観点で様々な抵抗線を比較し、オンチェーンモデルとの合致点を模索する。

 以下の単純移動平均線は、これまでビットコインの価格変動に関連性を示している:

 ・200周移動平均線は現在22kドルであり、歴史的に底値形成の指標となっている。
 ・111日移動平均線はパイサイクルトップ(Pi Cycle Top)指標の一つで、現在30kドルに位置しており、心理的な価格水準と上記で述べた供給の集中度合いと整合性がある。
 ・200日移動平均線は35kドルで取引されており、依然としてマクロ的な強気相場と弱気相場のモメンタム間における重要な境界線である。

ライブワークベンチ

 次に、短期保有者と長期保有者、そして最後に市場全体のコストベーシスのオンチェーンコストを使用して、相対的な価格行動の強さを評価する。また、HODLerのインプライドフェアバリューのようなものの表現を目的とした活動度による実現価格比率(RPLR)を検討する。

 ・価格は、22kドルで取引されている実現価格とLTHの実現価格の両方を上回るブレイクアウトを記録している。この2つの間のチャネルは、200周移動平均線と交わっているため、注目されるポイントである。
 ・短期保有者(STH)のコストベーシスは現在28.5kドルで取引されており、強い下降トレンドにある。これは、STHが損失を認識して平均コストベーシスを引き下げたことと、現在のスポット価格に近い(またはそれよりも低い)価格で購入する新しいSTHコホートにコインが移転したことの2つのメカニズムによる結果である。
 ・RPLRは35.8kドルで取引されており、200日移動平均線と交わっている。200日移動平均線という広い範囲と、RPLRのHODLerによって付与されたと予想できる価値を考えると、これらのモデルは注目に値する構造レベルであると言えるだろう。

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 LTHコホートのコストベーシスが市場全体のコストベーシス(実現価格)を上回って取引された場合、興味深い相互作用が観察される。LTHの実現価格が上昇するためには、LTH自身のコストベーシスより高いコインを購入するか、より高いコストベーシスのコインが155日の閾値を越えて成熟しなければならない。弱気相場では、これは高いハードルであることが多く、めったに起こらない。

 その代わり、利益が実現された結果として実現価格が上昇するのが一般的である。市場が底堅くなり、利益確定分を吸収するのに十分な需要が流入すると、実現価格はLTHの実現価格を超えて上昇することがある。

 過去の弱気相場における安値分岐の期間は248日から575日であった。今回のサイクルでは、17日間と比較的短い期間しか有効でない。

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モメンタムの合流

 実現総額勾配オシレーター(Market Realized Gradient Oscillator)は統計的に正規化されたオシレーターであり、投機的価値と純粋な資金流入の間のモメンタムにおける相対的変化を測定するために設計されている。これは市場価格と実現価格間の変化率を比較している。

 測定する期間中において正の値である場合は、建設的な上昇モメンタムを示す。
 測定する期間中において負の値である場合は、弱気のモメンタムを示す。
 ・1を上回るか下回るかは、それぞれ上昇または下降の勢いが変化していることを示す。

 ここでは、オシレーターの14日、28日、140日の間の合流を評価し、複数の時間枠に渡る関連性を確認する。

 14日MRGOから見てみると、勢いが増していることを示す構造的な高値更新が見られる。14日オシレーターは隔週であるため、特に敏感かつ反応しやすいが、よりノイズが多いのが特徴である。

 ・このパターンがさらに上方へ継続する場合、短期的な反騰の可能性がある。
 ・正の値から負の値となった場合は、短期的な勢いが弱まったことを意味する。

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 28日MRGOも同様に高値を更新しており、長期的には下降モメンタムが鈍化していることを示唆している。現在は緩やかな上昇モメンタムが有効であることが分かる。しかし、6月の売り相場の直前に見られたように、前回の上昇モメンタムの試みは脱する勢いを達成できず、激しい価格の崩壊が起こった。

 このため、短期的に見れば、資本流入の規模に見合ったモメンタムは岐路に立たされていると言える。

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 140日MRGOは、より長い時間軸のモメンタムオシレーターである。140日線は、先に説明したものと異なり、短期的な価格変動の影響を受けにくいため、長期的なモメンタムとマクロトレンドを反映する指標となる。

 ・140日MRGOは、2021年3月以降において持続的で低いピークが見られており、2022年には正の値を記録していない。これは、マクロ的な弱気相場のダイナミクスが過去15ヶ月間作用していた可能性を浮き彫りにしている。
 ・現在の長期的な負の値のレジームは、2022年の価格パフォーマンスが持続的にマイナスであることを示しており、現段階では依然として弱気派に有利な状況にある。
 ・基本的なトレンドはゆっくりと上昇を続け、長期的な回復の可能性を示しているが、さらなる期間と回復の時間が必要であることを示唆している。

 140日MRGOのレンズを通して見ると、2021年5月の売り相場がこのサイクルにおいて最も厳しいモメンタムの変化であることに変わりはない。しかし、「歴史的な水準の弱気相場」で述べたように、最近の5月(LUNA崩壊)と2022年6月の売り相場は、記録的な大きさであると考えられる。マクロ的には、市場の下降モメンタムの度合いが時間とともに弱まって売り手の疲弊を示す可能性があり、安定化が目前に迫っていることを示唆している。

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結論とサマリー

 今年に入ってから価格の上昇が見られないため、すべての投資家層で収益性が低くなっている。長期保有者層も例外ではなく、彼らの売却パターンは、2022年5月から6月にかけて著しいフラッシュアウトが発生したことを示唆している。

 しかし再分配が行われ、コインが徐々にHODLerに移動していることで、長期供給ダイナミクスは改善を続けている。20kドル、30kドル、40kドルに顕著な供給の集中が見られ、テクニカルとオンチェーン価格モデルの両方と一致する傾向があるため、これらの価格帯は重要で興味深い領域となっている。

 短期的なモメンタムは、実現価格と長期保有者の実現価格がサポートレベルとして維持される場合、上昇の継続を示唆している。長期的には、モメンタムは最悪の事態が収束したことを示唆しているが、回復するには基礎的な修復が続行し、より長い時間が必要となる可能性がある。


製品アップデート

 製品の更新、改善、指標やデータの手動更新は、すべて変更履歴に記録されているので、ご参照ください。

 ・新しい指標のリリース:Provably LostProbably Lost
 ・ワークベンチのパフォーマンス改善:min/max関数、sma関数、hline関数の速度を大幅に改善した。
 ・新しいライトニングネットワークの指標をリリース: ライトニングネットワークのベース手数料(中央値)ライトニングネットワーク手数料率(中央値)ライトニングネットワークジニ係数(容量分布)ライトニングネットワークジニ係数(チャネル分布)ライトニングネットワークノードの接続性