2022年 今年のオンチェーン

 混沌かつ不安定で、財政面において過酷な2022年が終わろうとする中、我々はビットコイン、イーサリアム、ステーブルコイン市場における現段階の状況を探る。このニュースレターは今年の最終号であり、エキサイティングな2023年を迎えることを楽しみにしている。

2022年 今年のオンチェーン

 2022年はデジタル資産業界だけでなく、より広範な金融市場にとって、最も混沌かつ不安定で、財政的に過酷な年の一つであった。中央銀行の金融政策が180度転換し、数十年にわたる極めて緩和的な与信状況の後に続く金融引き締めにより、ほとんどの資産クラスにおいて深刻かつ急速なドローダウンを引き起こした。
 今回の「今週のオンチェーン」は今年最後の号となる(業界を動かすような大きな出来事があれば、アンコールに応じる可能性はある)。そのため、この1年に対するハイレベルな振り返りとともに、2023年における注目点を説明する。

 ・ボラティリティ、デリバティブ、先物のレバレッジ
 ・昨年における実現損の深刻度合い
 ・ビットコインのオンチェーン供給構造と集中度合い
 ・ビットコインのマイニングセクターの冷え込み
 ・イーサリアムのマージ後における供給ダイナミクス
 ・イーサリアムのガス消費の占有率における傾向の進展
 ・ステーブルコイン市場のトレンドと占有率の変化


 Glassnodeチームより:「今週のオンチェーン」の読者の皆様、そしてGlassnodeのメンバーの皆様、今年も皆様のサポートに感謝申し上げます。我々が執筆や作成を楽しんでいるのと同様に、皆様がWoCを読み、Glassnodeのツールの利用を楽しまれていることを願っています。

 そして、皆様が素敵な年末年始を過ごされることを願うととともに、2023年もまたエキサイティングな年になることを楽しみにしています。

静かな未来

 混沌を極めた1年を経て12月に入り、ビットコイン市場は非常に静かになってきた。BTCの短期実現ボラティリティは現在、22%(1週間)、28%(2週間)と数年来の低水準にあり、2020年10月以来の低ボラティリティなレジームとなっている。

ライブアドバンスチャート

 先物の出来高も同様に減少しており、現在は数年来の低水準に近づいている。現在、BTCとETHの両市場は1日あたり95億ドルから105億ドルの間という同等の取引量となっている。これは、流動性の引き締め、広範なデレバレッジ、そしてこの業界における多くの融資およびトレーディングデスクの減損がもたらした大きな影響を示している。

ライブプロフェッショナルチャート

 FTXの崩壊後、先物市場の建玉は大きく引き戻されている。下図は、先物建玉とそれに応じた資産の時価総額の比率として算出したレバレッジ比率を示している。
 11月の先物レバレッジの上昇と解消においては、ETHの方が著しく厳しく、おそらく残存する「マージ取引」が決済された結果だと思われる。ETHの建玉は、時価総額の4.75%から3.10%まで減少している。BTCのレバレッジ比率はETH市場より1週間前にピークを迎え、その後、先月に時価総額の3.46%から2.50%まで減少している。

ライブプロフェッショナルチャート

 ビットコインカレンダー先物と無期限先物は共にバックワーディションの状態で取引されており、年率換算でそれぞれ-0.3%、-2.5%となっている。バックワーディションの期間が持続的であることは珍しく、同様の期間は2021年5月から7月の間だけである。このことは、市場がさらなる下降リスクに対して相対的に「ヘッジ」していること、および/または、ショートの投機筋が多いことを示唆している。

ライブダッシュボード

市場への還元

 2020-21年における金融緩和政策時代の過剰な流動性バブルにより、オンチェーンでの年間実現利益総額は記録的な額となった。2021年11月のATH直後にピークを迎え、オンチェーンで資金を動かすビットコイン投資家により年間4,550億ドル以上の利益がもたらされた。

 それ以降は弱気相場レジームが支配し、市場は2,130億ドル以上の実現損を還元した。これは、2020-21年の強気の利益の46.8%に相当しており、市場が47.9%の損失を還元した2018年の弱気相場の規模と相対的に著しく似ている。

ライブアドバンスチャート

 注目すべきは長期保有者の影響であり、彼らはこのサイクルにおいて史上最大の相対損失の急増を2回実現した。11月における長期保有者の損失は1日あたり時価総額の-0.10%でピークに達し、その規模は2015年と2018年のサイクルにおける安値時に匹敵するレベルに相当する。6月の売り相場は1日あたり時価総額の-0.09%と同様に著しく、占有率が高い長期保有者は-50%から-80%の損失を抱えたままとなった。

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長期的な視点に立つ

 このように目を見張るような著しい損失にもかかわらず、コイン供給の年齢と、残っている人々によるHODLingの傾向は上昇し続けている。長期保有者による供給は、FTX騒動後のパニック売りから完全に戻し、1,390万8,000BTC(流通供給の72.3%)という新たなATHに達した。

 この指標におけるほぼ直線に近い上昇傾向は、2022年6月と7月に起きた3ACと業界の貸し手の破綻によって触発されたデレバレッジイベントの直後に起きた大量のコイン蓄積を反映したものである。

ライブプロフェッショナルチャート

 以下のチャートは、コインの供給における比重と分布を年齢帯別で色分けしたものである。

 ・暖色は、古いコインが大量に供給されていることを示し、通常は市場のトップとキャピチュレーションにおけるボトムで見られる。
 ・寒色は、投資家がコインを蓄積し売却せず残しており、成熟していることを示している。
 ・暗い色のバーは、コインの密度が高いことを示す(明るい色のバーではその逆)。

 2022年では相場が下がる度にコインの再分配(つまり再蓄積)の密度が高まっていることがわかる。特に2022年6月から10月のゾーンが顕著であり、$18kから$24kドルの間で取得された多くのコインが、6ヶ月以上のバンドまで熟成されていることが分かる(そのため、上記した長期保有者の供給が上昇する)。

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マイナーの困難な時期

 先週は、2021年7月のグレート・マイニング・マイグレーション以来、最大の難易度の下方調整が行われた。難易度は7.32%低下し、アクティブなハッシュレートの大部分がスイッチオフしたことを意味しており、おそらく継続的な収入ストレスを受けた結果と考えられる。

ライブアドバンスチャート

 その結果、ハッシュリボンも再び反転し、11月下旬にクロスオーバーが発生した。一部のオペレーターがASICリグをオフラインにするほど、マイニング業界にストレスがあることを意味している。これは通常、マイナーの収入源がOPEX費用を下回り、リグの採算が合わなくなることに関連している。

ライブアドバンスチャート

 しかし、ハッシュ価格が過去最低をかろうじて上回っているというレベルを考えると、これはあまり驚きではない。現在はスポット価格(~$17k)が2020年10月(~$10k)よりも70%高いにもかかわらず、次のビットコインブロックを探し当てるために競争しているハッシュパワーの量は70%高い。

ライブアドバンスチャート

マージ後

 9月15日に完了したイーサリアムマージは、間違いなく今年最も素晴らしいエンジニアリングにおける偉業だった。このイベントの即効性を視覚化するために、下図は2022年までのブロック間隔の平均値と中央値を示している。プルーフ・オブ・ワークによる自然な確率的変動が終わり、プルーフ・オブ・ステークによる正確であらかじめ決められた12秒のブロックタイムが有効になった時点は一目瞭然である。

ライブアドバンスチャート

 マージ以降、アクティブなバリデーター数は13.3%増加し、現在484k以上のバリデーターが稼動している。これにより、ステークされたETHは15.618M ETHとなり、これは流通供給量の12.89%に相当する。

ライブアドバンスダッシュボード

 プルーフ・オブ・ステークへの移行に伴い、イーサリアムの通貨政策は大幅に低い発行スケジュールへと調整された。名目上の発行率(青)は約+0.5%だが、EIP1559の燃焼メカニズム(赤)を考慮すると、通常の日ではほぼ相殺されて約+0.1%となる。マージ前の正味のインフレ率が+3.9%であったことと比較すると、いかに発行量が劇的に変化したかが分かる。

ライブアドバンスダッシュボード

 本稿執筆時点では、マージ後のETH供給量の変化はちょうどネットデフレに転じており、現在のコイン供給量はマージ前よりも-242ETH減少している。これは、以前の発行スケジュールで発行されていたであろう推定104.4万ETHと比較している。

ライブアドバンスダッシュボード

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DeFiのデレバレッジ

 トークン価格が極端に下落し流動性が著しく低下したため、DeFiにロックされた総額は劇的に減少した。2021年11月で市場のATHである1600億ドルのピークを迎えた後、DeFiでロックされた総価値は1203億ドル以上(-75%)減少している。これによりDeFiの担保価値は3970億ドルまで下がり、2021年2月の水準に戻った。

ライブアドバンスチャート

 取引タイプ別のガス消費の優位性も、過去2年間で市場の選好が変化していることを実証している。DeFiプロトコルは、2020年7月から2021年5月まで全ガス消費量における25%から30%を占めていたが、それ以降はわずか14%にまで低下している。

 同様に景気循環のサイクルの中で、NFT関連の取引は2022年上半期までガス使用量における20%から38%を占めていたが、現在は14%まで減少している。ステーブルコインについては、今年は5%から6%の優位性を維持している。

ライブアドバンスダッシュボード

ステーブルコインの流出

 ステーブルコインは2020年以降、業界の基幹的資産となり、現在は時価総額上位6資産のうち3資産がステーブルコインとなっている。ステーブルコインの総供給量は2022年3月に1,615億ドルでピークに達したが、その後143億ドルを超える大規模な償還があった。

 これは、1ヶ月あたり-40億ドルから-80億ドルの純資本流出を反映している。しかし、これはピーク時のステーブルコイン供給量におけるわずか8%のみを反映しているに過ぎず、この資本の大部分が新しいデジタルドル形式に残っていることを示唆している点も注目すべきである。

ライブアドバンスダッシュボード

 また、ステーブルコインの供給量の相対的な占有率にも顕著な変化が起きている。
 ・BUSDは、2022年に市場シェアを10%から16%に拡大し、現在総資産額で2200億ドルを占めており、際立っている。
 ・Tetherは、5月以降のUSDTの償還が合計184.2億ドルにもかかわらず、比較的一貫して45%から50%の市場シェアを維持している。
 ・USDCの支配率は6月に38%でピークに達したが、その後31.3%まで低下し、現在は447.5億ドルの価値を占有している。

ライブアドバンスダッシュボード

 現在、ステーブルコインが償還され、正味で資本が流出している一方で、イーサリアムの送金量は2022年下半期を通して上昇を続けている。ステーブルコインの総送金量は2021-22年の大半は1日あたり約160億ドルで安定していたが、7月以降は1日あたり200億ドルから300億ドルに上昇し続けている。

 5月、6月、11月のボラティリティの高い売り相場の際、ステーブルコインの総送金量は370億ドルから510億ドルの間でピークに達しており、デレバレッジイベント時の米ドル流動性に対する極端な需要を示唆している。

ライブアドバンスダッシュボード

サマリーと結論

 今年は、BTCとETHの両方が、11月に記録した史上最高値から-75%を超えるドローダウンとなった。5月以降、これは大規模なデレバレッジイベントによって中断されている。その結果、大幅な与信の収縮、多数の破産、数十億ドル相当のポンジスキームプロジェクト(LUNA-UST)の不運な崩壊、そして悲しいことにFTXのケースでは詐欺と思われる事態が発生した。

 2022年は過酷な一年であり、流動性と投機は枯渇し、ボラティリティと取引量は数年来の低水準まで押し下げられた。投機筋がいなくなったことで、ビットコイン長期保有者の供給はさらにATHまで押し上げられ、投資家は価格が下がるたびにコインの量を増やし続けているように見える。イーサリアムのマージも9月に無事実行され、ステーブルコインは引き続き有意義なプロダクトへの適合を実証している。
 分散型システムの回復力は長年の試練と戦いの傷跡によって築かれるものだが、これらのイベントが、最終的にHODLerという最終的に残る買い手を形成しているのである。2022年のすべての困難の後でも、デジタル資産業界は依然として立ち上がり、そして教訓を学び、ビットコインの次のブロックを探し続けている。
 2023年に何が起ころうとも、我々はこの業界は時の試練に耐えることができると信じ、その理由を分析、研究そして理解するために必要なツールとデータを構築し続けていく。

 チクタク、次のブロックへ、そして2023年でまたお会いしよう。


 免責事項:本レポートは投資アドバイスを提供するものではなく、すべてのデータは情報提供のみを目的として提供しています。ここで提供された情報に基づいて投資判断を下すのではなく、ご自身の責任で行ってください。


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