ビットコインは復活したのか

 歴史上最もボラティリティが低い1ヶ月を経たあと、ビットコインは爆発的に急反騰し、21kドルを超えた。これにより、BTC保有者とマイナーは黒字に転換しており、2022年に見られたすべての上昇相場より著しく際立っている。

ビットコインは復活したのか

 ビットコインの歴史の中で最も変動の少ない期間(WoC 2)を経て、今週は23.3%という著しく爆発的な急反騰を成し遂げた。BTC価格は、広範に観察されていたいくつかのテクニカルとオンチェーン価格モデルを突破し、週次安値である17kドルから21kドル超まで急反騰した。これらのモデルの多くは弱気相場において重要な心理的レジスタンス水準として機能する傾向があるため、今回の出来事は注目に値すると言える。

 今回は、ビットコインの値動きを反映する様々な価格モデル、およびその土台となるファンダメンタルズに関して以下を取り上げる。

 ・200日単純移動平均線などの主要なテクニカルとオンチェーンレベル、および様々な投資家コホートの実現価格。
 ・推定されるマイナーの平均的なストレスポイント、業界における深刻な収入ストレスの減少を示す可能性。
 ・ネットワークの処理量に基づく公正価値モデル、決済活動に基づいて潜在的な価値を測定しようとするもの。
 ・実現収益の短期的な回復、これは投資家の行動パターンの変化を示す重要な指標となることが歴史的に示されている。

🪟本レポートで取り上げたすべてのチャートは今週のオンチェーンダッシュボードで見ることができる。
🔔本編で紹介したポイントは、Glassnode Studio内で設定することができる。

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黒字に戻る

 200日単純移動平均線は、すべての資産クラスにおいて最も広く使用されているテクニカル分析ツールの 1 つであり、しばしばマクロ市場のトレンドに対するリトマス試験として応用されている。ビットコインの場合、単に価格が200日単純移動平均線の上にあるか下にあるかを見ると、それぞれマクロ的に強気トレンドまたは弱気トレンドと相関することが長年にわたって証明されている。

 今週の強い上昇によって、市場は19.5kドルの心理的レベルを乗り越えた。ビットコイン市場はしばしば不思議なほど一貫した循環的な挙動が見られる。今回のサイクルでは200日単純移動平均線を381日下回って取引されており、これは386日下回っていた2018-19年の弱気相場とわずか5日差である。

🔔注意価格が19.5kドルを下抜けると200日単純移動平均を割り込むことになり、相場の弱さは注意すべきレベルである可能性がある。

 200日単純移動平均線のすぐ上には19.7kドルの実現価格が位置していた。ビットコインの世界では、この心理的なコストベーシスモデルが広範に観察されている。現在、価格がこの価格モデルを明白に上回っていることから、平均的なBTC保有者がネットで含み益状態に戻っていることが分かる。

 現在までのところ、2022-23年の弱気相場は実現価格を179日間下回っており、過去4回の弱気サイクルの中で2番目に長い期間となっている。

 下図は、実現価格をコホートに分割した3つのパターンを示している:

 ・🔴短期保有者の実現価格(18.0kドル)は、過去155日間に売買されたコインの平均値である。
 ・🟠実現価格 (19.7kドル)は、コイン保有者全員の平均値である。
 ・🔵長期保有者の実現価格 (22.4kドル)は、少なくとも155日間保有されたコインの平均値である。

 このモデルからは、いくつかの重要な見解が得られる。

 1.現在の市場はまだ長期保有者の実現価格を突破していないものの、市場の強さは2019年4月に観察されたものと著しく相似している
      
 2.2018-19年と2022-23年の弱気相場では、3つの実現価格がいずれも収束しており、均質な保有者ベース(保有時間にかかわらず、BTC保有者がほぼ同等のコストベーシスになる状態)に戻っていることを示している。

 3.短期保有者の実現価格は他よりも低く、FTX崩壊後の大きなキャピチュレーション式のイベント後に著しい量のコインが売買されたことを反映している。

🔔注意:価格が22.4kドルを上回ると、長期保有者実現価格を突破し、全コホートの平均的な保有者が利益を得ることになる。
ライブプロフェッショナルチャート

フェアバリューを推定する

 ビットコインの公正な現在の価値または将来の価値を推定するという目標は、数え切れないほどのモデリングの試みや反復の対象になってきた。このようなモデルの1つの一つとしてWilly Woo氏によって最初に提示されたモデルは、取引高とNVT比率から導き出されている。

 このモデルでは過去2年間の決済量を振り返り、ネットワーク価値の処理量に基づき、「予想フェアバリュー」の推定を導き出す。以下のモデルのパターンは、当社の変化率調整済み取引高を使用している。当該取引高は、業界標準の発見的手法を使用して送金取引をフィルタリングする取引高である。過去12ヶ月の間に2つの注目すべき観察結果があった:

 1.このモデルは2022年のビットコインのフェアバリューを大幅に過大評価していた。今にして思えば、これは大規模なデレバレッジイベント中において、大量のエンティティから供給された取引高の結果であると思われるが、不幸なことに末期のFTX/Alameda社によるウォレットの(誤った)管理という要素も含まれている。
 2.このモデルは、先週取り上げられた送金量の大幅な減少に伴って崩壊し、8.2kドルから10.0kドル間の公正価値を示唆している。

ライブアドバンスチャート

 しかし、Glassnodeのエンティティ調整アルゴリズムによって、我々は経済的に有意な真の送金量を一層正確に表現し、価格との関係性をより可視化した洗練されたNVT価格モデルを導き出すことができる。

 このバージョンは、決済された経済的価値の最良推定値に基づき、ビットコインの「フェアバリュー」を15.0kドル~17.6kドルと推定している。これは、前月に維持していた価格範囲とほぼ一致している。

ライブプロフェッショナルチャート

マイナーへの救済

 過去12ヶ月間、最も大きな打撃を受けた分野の1つがビットコインのマイナーであった。特にこのサイクルでは、上場企業の評価、ひいては株価が大きな打撃を受けたことが顕著に表れている。

 以下のモデルは、難易度がマイニング分野の最終的な「価格」を反映していると仮定し、BTCの平均生産コストを18,798ドルと推定している。

ライブアドバンスチャート

 別の生産コストモデルでは、難易度をコインの発行レートと等しくし、3つのバンドで表現している:

 ・🔴最も効率的なマイナー
 ・🟠平均的なマイナー
 ・🟣最も効率的でないマイナー

 平均的な生産コストは17,062ドルと推定されており、これは上記のモデル(18.8kドル)と似ているもののわずかに下回っている。両方のツールに基づくと、全体的にマイナーは今後はより有利な財務状況になると予期し、市場は(それが維持されると仮定して)必要な緩和を提供している。

🔔ポイント:価格が17.0kドルを割れると生産コストモデルを下回ることになり、マイナーは再び深刻な財政ストレスに陥る可能性がある。
ライブアドバンスチャート

 この点を説明するために、下のチャートで2020年5月頃にリリースされ、ごく最近まで代表的な運用リグの1つであったAntminer S19 Proの収益性を反映している。下図の色分けされたゾーンは、様々なAISC(All-in-Sustaining-Cost、総維持費)を想定したリグの推定収益性レベル($/kWh)を反映している。注:AISCとASICと混同しないよう注意

 ・🟣 $0.125/kWh
 ・🟢 $0.100/kWh
 ・🟡 $0.075/kWh
 ・🟠 $0.050/kWh
 ・🔴 $0.025/kWh

 このグラフをログスペースで表示すると、このリグが不採算になると推定される期間は、関連するカラープロットにギャップとして表示される。2020年5月から10月(リグのリリース直後と半減イベント)、そして2022年7月から今週までの2つの期間がそのような期間であることが明らかである。このモデルにより、S19 Proは過去7ヶ月間、AISCが~0.10ドル/kWh以上で稼働するマイナーにとっては採算が合わなかったと推定される。

🪟ASICリグの収益性、電力消費、収益に関連する一連の指標は、当社のライブダッシュボードで見ることができる:マイニングASICフリート(Mining ASIC Fleet)
ライブアドバンスチャート

収益性が戻る

 最後のトピックは、オンチェーンにおける収益性の高い取引の復活である。aSOPRモデルは、弱気市場を通して重要なレジスタンスラインであることが証明されている1.0の値を下から再トライしている最中である。

 aSOPRが上方にブレイクして上手く1.0の再挑戦に成功すれば、利益が実現し、それを吸収する十分な需要が流入することで、有意なレジームシフトを示唆することがある。

🔔ポイント:aSOPR(30日移動平均)が1.0を上抜けることは、収益性の回復が広範囲に及ぶことを示し、マクロ市場の強さを示唆する傾向がある。
ライブアドバンスチャート

 同様の観測は、送金中の米ドル総規模を考慮した実現損益率でも可能である。このモデルも1.0に再トライしており、収益性の高い取引が発生し、市場に吸収されていることを示す最初の兆候となっている。

🔔ポイント:実現損益率(30日移動平均)が1.0を上抜けた場合、収益性の回復が広範囲に及ぶことを示し、マクロ市場の強さを示唆する傾向がある。
ライブアドバンスチャート

合流点を求める

 最後に、当社は最近新しいダッシュボードデザインを発表した。これは、4つのコアコンセプトにわたる複数のオンチェーン指標間における合流点を見出すことを目的としている。このモデルは、歴史的に弱気相場からの力強い回復が進行中であることを示す重要な水準と観測を使いやすい視覚的ツールへと抽出したものである。
 簡潔にまとめるため本日のニュースレターでは詳細の説明は省くため、代わりにビデオガイドとダッシュボード自体に含まれるノート(およびこのテーマを扱う今後のレポート)をご覧になることをお勧めする。

ライブアドバンスチャート

サマリーと結論

 年初における爆発的な23.3%の上昇により、幅広い層のビットコイン投資家(およびマイナー)が純保有額(および運用額)を黒字化させた。これは価格の上昇だけでなく、ここ数ヶ月の間に膨大な量のコインが売買され、彼たちのコストベーシスがより低くリセットされた影響を反映している。
 aSOPRと実現損益率は損益分岐点である1.0を試しており、市場がこの上昇を維持できるかどうかが次の大きな課題となる。


免責事項:このレポートは、いかなる投資アドバイスも提供するものではありません。すべてのデータは情報提供のみを目的として提供されています。ここで提供された情報に基づいて投資判断を行うことはできず、投資判断はご自身の責任で行ってください。


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 12月は、市場にとって比較的静かな月であったものの、Glassnodeチームは、新しいディスカバリーページ機能、4件の新しいダッシュボード、23件のワークベンチのコンストラクションを提供するべく準備している。詳細については、12月のサービス更新を参照してほしい。

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