弱気相場におけるラリーの始まりか?

 BTCとETHは共に、極端な売られ過ぎ状態から脱却し、7月のFOMC後にリスクオンセンチメントによって一気に上昇した。現在は、これが弱気市場における一時的な上昇なのか、それとも持続的で強気な動きの始まりなのか注目が集まっている。

弱気相場におけるラリーの始まりか?

 今週のビットコインおよびデジタル資産市場は、米連邦準備制度理事会(FRB)の75ベーシスポイントの利上げに強く反応し、BTCは週足で5.7%、ETHは7.6%の上昇で取引を終えた。FOMCの発表でパウエル議長は、現在の目標金利である2.25%から2.5%のFF金利が中立とみなしていることを示唆し、景気減速に関するデータの悪化に目が向けられたため、全体的に市場はポジティブに反応した。

 多くの点で、ビットコインとイーサリアムの最近のポジティブな値動きは、約9ヶ月に及ぶ持続的な下落トレンドを乗り切った強気派へ待望されていた急反騰を与えている。2022年の弱気相場は、デジタル資産分野にとって歴史的にネガティブなものであった。しかし、このような持続的なリスクオフセンチメントの後では、弱気相場における急反騰なのか、持続的で強気なインパルスの始まりなのか注目点となる。

 今回はオンチェーン活動を基準として、市場が新規需要の流入を示唆しているのか、それとも継続性が失われているのかことを探る。


🔔 注意:市場やネットワークにおけるパフォーマンスの重要な変化の可能性がある主要な指標レベルを特定するために、随所に提示されている。Glassnodeのメンバーであれば、Glassnode Studioから直接アラートを設定できる。

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今週のオンチェーンダッシュボード
 今週のオンチェーンニュースレターでは、すべてのチャートが表示されるライブダッシュボードをご用意しています。このダッシュボードと対象となるすべての指標は、毎週火曜日に公開されるビデオレポートでさらに詳しく解説しています。Youtubeチャンネルビデオポータルでは、より多くのビデオコンテンツや指標のチュートリアルをご覧いただけます。


ビットコインの活動は横ばいで推移

 一般的に、ブロックチェーンネットワークへの新たな需要の流入は、オンチェーンでの使用の持続的な上昇によってサポートされて明らかとなる。オンチェーンアクティビティと供給ダイナミクスの両方を使用し、比較可能な最近の履歴と比較することでパフォーマンスを評価できる。

 ・強気相場インパルスは、より多くのユーザーがネットワークに参入し、オンチェーン活動が上昇することで現れる傾向がある。一般的にこれは、古い投資家の売却によって利確し、コインを新たな投資家に渡る供給量が増加し、新しい需要がこれらのコインを吸収することでサポートされる。

 ・弱気相場インパルスは、オンチェーン活動が減少する傾向があり、多くの場合、激しく降下する。弱気相場は投機家から長期保有者と信念が強い者へと供給が循環するため、回復に時間がかかる。

 ビットコインのアクティブアドレスは、明確に定義された下降トレンドチャネル🔴の中に依然に残っている。また、10-11月のATH 🔵は2021年4月のATHより著しく低いピークに達しており、ユーザーが大きく一掃され、需要が追い付かなかったことを示している。

 主要なキャピチュレーションイベントの際にアクティビティが急増したことを除けば、現在のネットワークアクティビティは、依然として新しい需要の流入が少ないことを示唆している。


🔔 注意アクティブアドレス(14 SMA)が950kを上回ると、オンチェーン活動が上昇し、市場の強さと需要の回復の可能性を示唆している。
ライブチャート

 オンチェーン取引とブロックスペースの需要も、同様のことを物語っている。昨年度の市場構造は、2018-19年度と非常に似ている(🔵で示す)。

 2021年5月🔴における最初の一掃と需要の崩壊の後、取引需要は横ばいからやや下降気味に推移しており、より信念が強いトレーダーや投資家のみが、安定な基盤として残っていることを示している。


🔔注意トランザクションレート(14 SMA)が3.0を上回ると、オンチェーン活動が上昇し、市場の強さと需要の回復の可能性を示唆している。
ライブチャート

 取引需要の低迷の結果、オンチェーン取引手数料は弱気市場の領域🔵に着実に入っており、1日あたりに発生した手数料の合計はわずか13.4BTCであることが分かる。アクティブアドレスや取引需要と同様に、2021年5月に需要の破壊🔴が見られるのは、ネットワークの集中度合いが崩れ、手数料が弱気市場のベースラインを形成し始めたからである。

 通常、強気相場では高い手数料率🟢を維持しており、多くの場合に需要回復の最初のシグナルの1つとなっている。まだ手数料の顕著な上昇は見られないが、この指標を注視することで回復のシグナルを得られる可能性が高い。


🔔 注意取引手数料(14 SMA)が35 BTC/日を上回ると、オンチェーン活動が上昇し、市場の強さと需要の回復の可能性を示唆している。
ライブチャート

 ビットコインブロックの平均データ履歴(バイト単位)を見ることで、これらの観察を確認できる。

 ・ネットワークが混雑し、ブロックがいっぱいになる🔴とマイナーは最大の手数料収入を得られるようブロックをできるだけ密に埋めるため、結果としてブロックサイズが大きくなる。
 ・ネットワークが混雑しておらず、ブロックが部分的に空である🔵場合は、マイナーがすべての容量を埋めるためのトランザクションが不十分であるため、結果としてブロックが小さくなる。

 なお、SegWitはビットコインの技術的なアップグレードであり、ビットコインブロックの最大データ容量を増やす働きをすることに注意していほしい。2021年6月以前は、SegWit採用率が55%を下回っており、最大ブロック容量が今よりも小さかったことを意味する。しかし、現在はSegWitの採用率が72%以上に達し、有効なブロックスペース容量が増えており、現在の混雑度は2021年5月時点よりもさらに低くなっている。

 全体として言えるのは、ビットコインネットワークがHODLer優位であることに変わりはなく、オンチェーンアクティビティで見ると、まだ目立った新規需要が戻っていないことを示している。

ライブチャート

 しかしポジティブな点として、ビットコインライトニングネットワーク(LN)のパブリックチャネルの容量は、過去最高を更新し続けていることが挙げられる。現在のLNの総パブリック容量は4,405BTCに達しており、弱気相場が続いているにもかかわらず過去2カ月間で19%増加した。

 この指標は、ユーザーがパブリックチャネルを持つノードを経由して価値を送るために利用できる流動性を測定しており、ネットワーク効果の拡大を測るのに良い指標である。この指標は、ノードを公開していない2つの当事者間で設定されたプライベートチャネルは考慮していない。

ライブチャート

Glassnode×CoinMarketCapの新レポート

 我々は、CoinMarketCapと共同で2022年の弱気相場がビットコインとイーサリアムの投資家にとってどれほど困難なものであったかを探る新たなレポートを発表する。資産の優位性、ステーブルコイン、投資家の収益性において起きている構造的な変化を分析し、弱気市場の底値形成のシグナルがあるかどうかを確認する。

 最新のレポートを読み、ライブダッシュボードで内容を参照してほしい。

レポートを読む

イーサリアムのアクティビティにおける短期の急上昇

 イーサリアムのネットワークは、過去12ヶ月間ビットコインと同じ傾向が多く見られており、ネットワークの総使用量と混雑度が徐々に悪化している。ここ数週間の強い値動きにもかかわらず、実にイーサリアムのネットワークの混雑度は、ここしばらく最低の状態となっており、支払われるガス価格が数年来の低さであることに表れている。

 イーサリアムの取引需要は2021年5月の売り相場以来、徐々に減少しており、ここ数週間は短い急上昇しか見られない。このトレンドが上昇を続けることができれば建設的である可能性があり、注目すべき点の一つとなる。


🔔注意:取引回数(14 SMA)が125万回を突破すると、オンチェーン活動が上昇し、市場の強さと需要の回復の可能性を示唆している。
ライブチャート

 イーサリアムはビットコインと比較して、メンプール内のトランザクションのプールが大きい傾向があり、容量がブロックスペースが99%以上に満たされることが一貫して見られる。その結果、支払われたガス価格は、しばしば真の混雑度を追跡する優れた方法となる。

 これは、トランザクションの確認を求めるユーザーの緊急性を、彼らが手数料に費やすことをいとわない価値として測定する。

 以下のグラフは下記のことを示している:

 ・🟢平均ガス限度:マイナーが1ブロックに収められる最大ガス量(現在15Mだが、EIP1559では30Mまで拡張可能)。
 ・🔴 ブロックごとの平均ガス消費量:これは、ガス限度に対する実際の使用状況である。
 ・🔵ガス代の中央値(Gwei):需要期に拡大し、混雑度の少ない時期に縮小することがわかる。

ライブワークベンチ

 最近、イーサリアムのガス代は7日間の中央値ベーシスでわずか17.5Gweiまで低下している。DeFi Summerの前、つまり強気相場が始まる前である2020年5月以来、ネットワーク混雑度とガス価格は最低値である。

 これは、最近のポジティブな値動きにもかかわらず、新しい利用が流入しておらず、全体としてイーサリアムは相対的な活動において数年来の低水準にあることを示唆している。


🔔注意:ガス価格の中央値(7 SMA)が30Gwei以上までブレイクすると、オンチェーン活動が上昇し、市場の強さと需要の回復の可能性を示唆している。
ライブチャート

 その結果、現在のEIP1559経由のETH燃焼率は、史上最低となっている。今のETHの燃焼総量は発行総量においてわずか11%である。イーサリアムは、現在の発行スケジュールでは、過去3回しかデフレ領域に突入していない。

 これは事実上、EIP1559以降のすべての歴史と比較すると、比較的大量のETHが流通することを意味する

ライブワークベンチ

吸収される利益

 最後に、ビットコインとイーサリアムの市場構造をSOPRという指標で評価する。SOPR は使用済みコインに対して市場が実現した平均利益(> 1.0)または損失(< 1.0)を捉える。一般的に言えば:

 ・🟢 高い値(> 1.0)は、より大きな利益が実現しており、市場にはそれを吸収するのに十分な需要が流入していることを示している。
 ・🔼強気相場のサポートは、投資家が一時的に下落した時にコストベーシスで購入するため、1.0のSOPR値がサポートとして機能することを特徴としている。
 ・🔴低い値(<1.0)は、より大きな損失が実現しており、投資家が平均的にコストベーシスより低いコインを売却していることを示している。
 ・🔽弱気相場のレジスタンスは、SOPR値の1.0が抵抗線として機能し、投資家が上昇時にコストベーシスで売却することを特徴としている。

 ビットコインの場合、SOPRは6月上旬以来2回目の1.0突破を試みている。通常、相場は脱出速度に達するまでに何度か試行する必要がある。理想的な強気シナリオは1.0を上抜けた後、支持線を見出しながら再試行することである。


🔔注意:BTC SOPR (7 SMA) が 1.0 をブレイクし、そのレベルを維持すると、収益性が戻り、市場が回復する可能性があることを示している。
ライブチャート

 イーサリアムはより幸運なことに、SOPR値1.0を突き抜け、最初の再試行をサポートとして見つけることができた。しかし、上記のようなオンチェーン活動の指標がやや乏しいことから、1.0を下回る反転に注意することが賢明であり、これは弱気のシグナルとなる可能性がある。これは、1.0を短期間上回った後、再び下落に転じる過去の弱気相場と類似している。


🔔 注意:SOPR(7SMA)が1.0を割り込むと、収益性の低下が低下し、市場の弱さの可能性を示唆している。
ライブチャート

サマリーと結論

 今週ビットコインとイーサリアムは著しく売られ過ぎていた状況から反発し、7月のFOMC後のリスクオンセンチメントに拍車をかけた。

 しかし水面化では、オンチェーンでの取引需要は依然として乏しく、この上昇は、観察可能な需要活動において納得のいくフォローアップはまだ見られていない。ビットコインブロックは部分的に空になり、イーサリアムガス価格は数年来の低水準でEIP1559の燃焼速度は史上最低となっている。

 もちろん、オンチェーン活動は全体の一部に過ぎず、SOPRの収益性の回復における兆候は心強いものである。今後、こうした上昇トレンドが維持・改善されるかどうかに注目が集まっており、これが単なる弱気相場の緩和なのか、より建設的な構造転換なのかを判断する材料となるだろう。


製品アップデート

 製品の更新、改善、指標やデータの手動更新は、すべて変更履歴に記録されているので、ご参照ください。

 ・APE、SHIB、SAND、stETH ERC20トークンのサポートをリリースした。
 ・新しい指標をリリースした:Provably LostProbably Lost
 ・ワークベンチのパフォーマンス向上:min/max関数、sma関数、hline関数の速度を大幅に改善した。
 ・Gemini ETH残高のラベルを改善した。