厳しい試練

 世界的な流動性の縮小が続く中、ビットコイン短期保有者は、ビットコイン市場が心理的なサポートレベルである20kドルの維持に苦戦しており、大きなプレッシャー下にいることに気づいた。

厳しい試練


 今週はすべての資産市場において流動性が低下し、ドル高が続行、DXY指数は20年ぶりの高値となる110.27まで上昇した。ユーロ圏は、貿易収支の赤字、エネルギー不足の懸念、そしてユーロが米ドルのパリティからさらに下落するなど、ますますストレスが高まっている状況である。

 他のほとんどの通貨ペアは弱く、株式や債券、ビットコイン市場も同様に圧力がかかり続けている。ビットコインに限って言えば、根底となる市場はマクロの情勢と非常によく似ており、短期的には不安定で不確定であるものの、長期的な見通しは一貫しており、よく発展したトレンドによって特徴づけられる。

 本ニュースレターでは、この二分された市場の消費行動によるレンズを通して探り、マクロ規模の蓄積レジームにおける局所的な売却の領域を検証する。また、HODLer、短期保有者、ウォレットサイズ別など、様々なコホートについてより詳細に調査し、それぞれのストレスレベルを理解することで、この評価を補足する。


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局所的な売却

 まず始めに、現在の価格帯に応じて発生している蓄積/売却の程度を評価する。ビットコイン蓄積トレンドスコアは、参加者の消費行動を理解するために使用され、価格行動に対する市場の反応を説明するために役立つ。

 過去12ヶ月間、我々は明確な4つの段階を見てきた:

 ・段階1(蓄積):2021年11月に新たなATHをつけた後、投資家の高揚感は完璧な蓄積スコアへ反映し、市場は好機と判断したディップでやすやすと購入した。
 ・段階2(売却):ゆっくりと、しかし持続的に価格が下落し、その直近で蓄積を行った投資家は大きな損失を被った。このため、高揚感から絶望感へと感情が変化し、含み損を抱える参加者はコインを売却し、実際に弱気市場へ突入し始めた。
 ・段階3(蓄積):LUNAの崩壊は、業界全体まで及んでいた多くのレバレッジに波及し、一方的かつ大規模なデレバレッジが誘発された。すでに低迷していた市場はが安値を更新したにも関わらず、参加者は30kドル、そして再び20kドルを下回った2回のキャピチュレーションの安値で、ほぼ全面的に蓄積へと移行する反応を見せた。
 ・段階4(売却):数ヶ月にわたる蓄積の後、市場は24kドルを超えて上昇したがが、WoC34WoC35で述べたように、流動性放出のチャンスとして売却と利確がなされた。

ライブチャート

 このような行動をさらにコホートごとに分離し、それぞれのレジームにおける主要な参加者を評価できる。

 現在の市場において最も注目されているコホートは、世界市場の不確定性の中で、流動性の出口を利用し、24,500ドルの高値圏で積極的にコインを売却したクジラ(残高が10k BTC+)である。

 クジラたちによる市場への過剰な供給は、すでに低下していた需要サイドを圧倒し、局所的な高値の形成に至ったようだ。

エンジンルームによるライブ指標

 この動きは、クジラの取引所ネットポジション変化(Whale-Exchange Net Position Change)という指標で確認できる。このツールは、取引所に出入りするコインだけを考慮した、クジラ残高(1k BTC+)の30日間における純変化を見ることができる。

 ・正の値(🟢)は、クジラ残高の純増(および取引所からの出金)を示す。
 ・負の値(🔴)は、クジラ残高の純減(および取引所への入金)を示す。

 17.6kドルまで売られた後、クジラが取引所への純入金へと急速に逆転したことがわかる。売却のピークは、最近の局所的な高値である24.5kドルあたりで達した。これは、上記のコホート分析の結果と一致しており、残高10k+以上のコホートが支配的であると見られる。

ライブワークベンチ

マクロ的な蓄積

 局所的な時間軸からマクロな視点に移行し、次に複数年の時間枠において発生する蓄積/売却のレベルを評価する。

 ビットコインの長期的な行動のマクロ的な状態を評価するために、まず活動度(Liveliness)指標を利用する。活動度は、すべてのコインデーの消滅とすべてのコインデーの創造を釣り合わせることによって、ネットワークアクティビティ累計値を測定する。この指標のトレンドと勾配は、保有(下降トレンド)または売却(上昇トレンド)に対するより広い市場の嗜好に関する情報をもたらしてくれる。

 現在、活動度は強い下降トレンドにあり、2018年以降の弱気相場における3つのピークを確実に下回った。この事象は、コインデーが破壊されるよりもはるかに速く供給によって蓄積されていることを示唆しており、保有行為が支配するレジームと一致している。

ライブ指標

 次に、活動度から派生した指標である保有者ネットポジション変化(HODLer Net Position Change)を供給の領域において調査する。この指標は、保有者による供給量の月次推移を評価するために使用でき、市場サイクル間に2つの著しい段階変化を伴っていることが分かる:

 ・2020年11月から2021年4月にかけての価格上昇は、大規模な保有者による売却イベントを引き起こし、ピーク時に長期投資家は1ヶ月あたり-150k BTCというスピードで売却した。
 ・この売却期間は、2021年後半から現在に至るまで行われた保有者の蓄積によって現在はバランスが取れている。現在、毎月+70k BTCのポジション変動があり、2020年3月以降で保有者による最大の月間ポジション変動となっている。

 2020年11月から現在までの期間を評価すると、マクロ的な保有行為は数年来の高水準で70k BTC/月まで達しており、(価格が悲惨なままであっても)長期にわたる信念に合致していることが観察される。

ライブ指標

 次に、上記の2つのレジームにおける正味の効果を評価する。2020-21年の強気相場サイクルが始まった2020年11月以降の保有者コホートの純供給量変化を計算し、保有者の純流入と純流出を観察する。

 ・段階1:2020年11月から2021年5月まで、保有者が積極的にコインを売却して利益を得たため、数ヶ月という短期間に累積-394k BTCの流出が見られた。
 ・段階2:2021年5月から現在に至るまで、累積+394k BTCの流入が観察されており、事実上、以前の売却段階を補填している。

 最初の2021年の強気相場を推進するために利用された積極的な売却の期間は、売却レジームの期間に対してほぼ2倍に及ぶ一貫した保有者の蓄積の期間によって効果的に相殺された。これは、WoC27で分析を開始した観点であり、すべてのビットコイン観光客の追放にほぼ等しい「高揚のデトックス」を効果的に表している。

ライブワークベンチ

 我々はこれらの「予想供給領域」による観測を、測定された長期保有者(LTH)による供給を観察することで裏付ける。LTH供給は最近の供給減少以来、+250k BTCの上昇を見せており、あと30k BTCでATHというところまで総残高を押し上げている。

 LTH供給とみなされるコイン年齢基準は約155日であり、最低取得日は2022年4月上旬となる。この閾値は現在、前述の段階2:売却段階のピークである46kドル前後の価格に位置し、LUNAの暴落に触発された売り相場が起こる直前でもある。

 したがって、LTHの供給は今後1ヶ月間、おそらく10月中旬まで減速・停滞する可能性があり、その場合、この基準値はLUNA暴落後である段階3の蓄積期間内に十分に収まることになる。

ライブ指標

 また、LTHの供給量を蓄積アドレス数および非流動性供給量と比較することで、潜在的な供給ダイナミクスの変化をより包括的に把握することができる。なお、非流動性供給とは、ウォレットに保有され、ほとんど、あるいはまったく売却履歴のないコインのことを指す。蓄積アドレスとは、2回以上コインを受け取ったものの一度も売却したことがないアドレスのことである。

 STHからLTHへの閾値は、以下のグラフに示されている。この閾値は、蓄積アドレスの爆発的な増加、また非流動性供給の急激な上昇と一致している。両指標は最高値を更新し続けていることも注目である。

 これは、LTH の供給が今後数カ月にわたって上昇し続ける可能性を示しており、ネットワークの活動度によって現れるHODLerのレジームと合流することになるだろう。

ライブワークベンチ

 果てしなく続くように見える市場の不確実性に直面しているものの、保有者コホートは断固とした信念を持っている。LTH供給、活動度、保有者ネットポジションの変化のいずれかが大きく反転しない限り、実際にはビットコインの長期的な展望は依然として非常に建設的である。

 したがって、我々は最近の価格の低迷を引き起こしている可能性の高い、超短期保有者コホートに注目することにする。

短期的なストレステスト

 エンティティ調整済URPDは、STH(赤色)とLTH(青色)の供給量分布を示している。ここでは、最近の購入や日々の取引量を反映し、STHの供給が現在の価格周辺に極端に集中していることが確認できる。

 しかし、最近の価格下落に伴ってSTH供給の大半は含み損を抱えており、このコホートは深刻な財務的ストレスにさらされている。

エンジンルームによるライブ指標

 利益を持つ供給量の割合を見ることで、現在の価格帯における取引の大半がSTHコホートによって行われているというテーゼを補足することができる。2つの価格間における利益のある供給量の変化率を比較することで、選択した範囲内に「閉じ込められた」BTCの総数に関する洞察を得ることができる。

 したがって、24kドルから19.6kドルへの下降の間に、流通する供給のうち13.3%が利益がある状態を失ったことが観察できる。このことは、流通する供給量の2.55M(13.3%)がこの価格帯で最後に取引したことを示唆している。

ライブ指標

 このストレスは、絶対値として損失を持つ短期保有者供給(Short-Term Holder Supply in Loss)に反映されている。ここでは、24.4kドルからの下落間に、STHが所有する153万枚のコインがブレイクイーブン価格を下回ったことがわかる。

 したがって、前述の範囲に閉じ込められた255万枚のコインのうち153万枚(60%)が短期保有者によって占められていることになる。これは、流通量のたった16%に過ぎないコホートとしては不釣り合いであり、この範囲におけるコインの動きが短期保有者に支配されていることがさらに現れている。

ライブ指標

 また、損失を持つ短期保有者の供給比率を見ると、上記の観測を補填することができる。最近の局所的な最高値24kドルからの動きにより、わずか数日の間にSTH供給総量の50%が損失となった。

 これでSTH供給はほぼ満杯に近づき、96%のSTH供給が含み損になった。下降トレンドが続く中、完全な損失飽和は3度起きており、興味深いことに、これは局所的な底値形成のイベントであった。これは事実上、売り手が新しいSTHの買い手にコインを譲渡し、その買い手が局所的な底値を形成し、その後、価格が回復したときに利益を得るという、キャピチュレーションの結果である。

ライブワークベンチ

 HODLerの信念は揺るいでいないものの、市場は明らかに彼らの決意を試しているため、短期保有者がラインを維持することが求められている。取引量と動きの大半は、最適なエントリーを求めて争う最近の買い手によるものである。

急落防止

 ここ数年の悲惨な値動きと、現在の価格帯に好戦的なSTHが集中していることを考えると、再びキャピチュレーションが起こる可能性は少なくないだろう。したがって、あらゆる結果に備えることが賢明であり、さらに価格が下落した場合には、市場下で推移している2つの価格モデルを参考にすることができる:

 ・バランス価格指標は、BTCのフェアバリューモデルを捉えようとするものである。これは、実現価格(全コインに対して支払われた累計額)と移転価格(コインデーの消滅の累計米ドル価値)の差を算出することによって生成される。
 ・難易度回帰価格は、難易度と時価総額の間で対数回帰モデルを実行し算出された、ビットコインマイニングにかかる全ての生産コストをモデル化しようとするものである。

 両モデルとも、現在のサイクルにおける安値へのキャピチュレーション時に1時間足をサポートし、現17kドルの地点で交わっている。したがって、この2つのモデルの価格設定は、さらなる市場の低迷の際に注目すべき領域であり、またファンダメンタルズ的に支持される領域であると考えることができるかもしれない。

ライブワークベンチ

サマリーと結論

 世界的な弱気相場が続く中、相場はレンジの安値を超えて推移している。価格が高騰している時期は、流動性の出口を求める動きが続くため、大口投資家による積極的な売却が行われている。しかし、数年来のマクロ的な蓄積は依然として有効的であり、HODLersと長期保有者は現在の経済状況に対しても動揺していないように見える。

 HODLerの信念が揺らぐ中、市場は統計的に最も弱い手である短期保有者のストレステストを始めている。このコホートは、現在の価格帯における日々の主要な購入の推進者であり、現在の市場価値の近辺に大きなコインの集中が見られるようになった。

 しかし、直近の価格変動により、短期保有者の大半は含み損を抱えることになった。このように短期保有者は、「厳しい試練」として、市場から大きく疑問視されている。結果として、熱に浮かされたようにキャピチュレーションするか、あるいは、自分たちを追い詰めた炎によって強化されたコホートになるか、2つの結果が依然として残されている。


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