強健なHODLersによるダブルダウン

 5月上旬の売り相場による余波が続くなか、蓄積傾向の著しい転換が進行している。ビットコインHODLerは唯一残っているが、彼らの蓄積行動は、価格が$30k以下まで調整するとダブルダウンになることを示唆している。

強健なHODLersによるダブルダウン

 ビットコイン価格は、デジタル資産市場と伝統的な株式市場の間における最初の潜在的なデカップリングの兆候の後、逆の方向ではあるが、今週はレンジ相場となった。S&P500指数は今週の安値から7.4%上昇し、NASDAQは9.6%上昇した。一方、ビットコインは28,261ドルの安値まで下落し、月曜日の早い時間のみ週高値である30,710ドルまで回復した。イーサリアムにとっても厳しい週となり、17.8%下げて安値である1,700ドルをつけたが、月曜日の朝には1,900ドルまで反発した。

 今月上旬のLUNAをきっかけとした売り相場の後、ビットコインのオンチェーン蓄積トレンドには明確な変化が見受けられた。特に、残高が100BTC未満のエンティティ、および10kBTCを超えるエンティティが著しい蓄積を行った。残りのウォレットコホートも、売却からニュートラル(売却せず購入もせず)へと移行している。これは、不確定性と回転する資本を反映しており、断続的に蓄積と売却を行っていた2月から5月中旬と比較して、行動における著しい変化を表している。

 しかし、オンチェーン活動は依然として極めて低調であり、既存のHODLer層以外の資産に対する新たな関心を示すシグナルはほとんどない。とはいえ、残っているHODLerは、価格が下落してもダブルダウンすることを望んでいるようであり、たとえ損失が出てもコインを売ろうとしていない。


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HODLersだけが残る

 ここ数ヶ月、私たちはビットコインのオンチェーン活動がいかに乏しく、安定しているかを強調した。これは過去の弱気市場における典型的な特徴で、ネットワークの取引活動は、価格に対して非常に鈍感であるHODLerによって支配されている。

 2021年5月の売り相場の後、投資家が保有コインを完全に空にした時に小さなウォレットの「パージ」を目撃した。その後、投資家の心理に不確定性が伴いはじじめ、限界を迎えた買い手がドローダウンによって市場から一掃されたため、ウォレットの増加は4か月間にわたって停滞した。

 下のチャートでわかるように、2021年5月のような規模ではないものの、ここ最近の価格パフォーマンスの悪化に伴いウォレットの成長は短期的に一時停止している。

ライブチャート

 LUNAに触発された売り相場のようなボラティリティの高いイベント時には、投資家がパニックになったり、投げ売ったり、あるいは証拠金やポジションカバーのためにコインを移動したりするため、オンチェーンアクティビティが上昇することがよくある。2020年3月と2018年11月には、売り相場後のこのアクティビティの上昇により、その後の強気相場が開始した。

 この可能性を排除することはできないが、アクティブアドレスとエンティティの両方が、この上昇したアクティビティをすべて「戻し」、2021年9月以降に確立した範囲に戻っていることが分かる。言い換えれば、最近の売り相場と価格の下落は、このスペースへの新規ユーザーの流入をまだ触発しておらず、HODLersだけが残っている。

ライブチャート

蓄積行為の変化

 もちろん、オンチェーンでの活動はストーリーの一部でしかない。ウォレットの成長とアクティブなエンティティは停滞しているかもしれないが、この分析では、残っている投資家とウォレットの経済的価値は考慮されていない。価格が下落し調整すると、HODLerが1ドルあたりより多くのBTCを取得する能力が高まり、供給ダイナミクスの領域を調査することにつながる。

 蓄積トレンドスコアは、注目に値する行動の変化が見られた。ほぼ2週間にわたり、0.9を超えるというほぼ完璧なスコアが戻ってきた。これは、ネットワーク上の既存エンティティが保有量を大幅に増やしていることを示している。これは、1-4月期における断続的な蓄積(オレンジ色)とは明らかに異なるもので、比較的低い蓄積と分類できる。

 過去に累積トレンドの高値が持続した場合、2つのケースに分類される:

 ・強気相場における高値(青色)-通常、スマートマネーが残高を配分する際にトップ付近で発生するが、経験の浅い新規の買い手がさらに大量に流入してくる。
 ・弱気相場における高値(緑色)-投資家心理が不確定性から価値の蓄積に移行するため、一般的に価格が大幅に調整した後に発生する。注目すべき例外は、2021年12月のATH後の期間で、「安値」が「安値」でないことが判明し、これらのコインの多くが損失でより低い価格で再び売却された。

ライブチャート

 この高い蓄積スコアに貢献している様々なウォレットコホートを分析すると、2つの特定のグループを特定することができる:100 BTC未満のエンティティ、および10k BTC以上のエンティティである。

 前者を調べると、彼らのウォレット総保有量の勾配が、最近の売り相場後に強まったことがわかる。さらに、このコホートの総残高は80,724 BTC増加しており、LUNA Foundation Guard(詳細はこちら)によってロスカットされたネット80,081 BTCと驚くほど似ている。事実上、100BTC未満のエンティティからの低価格での需要の増加は、USTペッグを保つためにLFGによってロスカットされた供給量を相殺した。

ライブチャート

 高い累積トレンドスコアに貢献したもう一つのコホートは、10k BTC以上保有するクジラである。5月の間にこれらのエンティティは46,269 BTCを残高に追加しているが、これはLFGウォレットによる80k BTCの分配が含まれていることに注意してほしい。

ライブチャート

 これらの観測は、ウォレットコーホート指標による蓄積トレンドスコアの内訳を調査することでほぼ確認できる。ここでは、売却以来、100BTC未満および10kBTC以上を保有するエンティティは、ここ数週間で残高が大幅に増加したことを示す青色のシグナルを返していることがわかる。

 これは、特に大口が大規模な売却であった、売り相場までの間の比較的弱い値(黄色-赤色)からの顕著な変化である。100-10kBTCの残りのウォレットコホートは、0.5前後のより中立的な評価を維持しており、保有残高の純変動が比較的少ないことを示唆している。

 次節では、長期保有者の行為を調査し、我々の観測をさらに細分化する。

エンジンルームのライブチャート

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長期的な損失

 ここまでで、最近のオンチェーンにおける蓄積に参加した様々なウォレットサイズのコホートに関する事例が確立した。次に、投資家の確信度合いを測るために、ボラティリティが高いときに最も支出が少なかった長期保有者に注目する。長期保有者への移行は約155日前であり、価格が~$47kであった12月後半に位置していることに注意してほしい。

 LUNAによる売り相場前の2022年4月1日のURPD指標を見ると、2021-22年のサイクルに焦点を当てたコイン分布のプロファイルを描くことができる。

ライブチャート

 この4月1日のプロファイルを、今日のURPD(青色)と重ね合わせた。ここから、コインの分布の変化を評価し、次のような見解を得る:

 ・150万BTCが、主に$42kから$49kのレンジの買い手から、現在の$26.7kから$33kのレンジの買い手へと大きく再分配されている。
 ・他の場所でのコインの分布は4月1日のプロファイルと驚くほど似ており、比較的価格に敏感でないHODLerが引き続きビットコイン投資家のプロファイルを支配していることを示唆している。

ライブチャート

 3ヶ月未満のコインにおける現在の下降トレンドは、この観測を裏付けている。3ヶ月を振り返ると、3月1日以降に最後に売却されたすべてのコインが含まれており、これは最後のレンジの真ん中にあたる。3ヶ月前のHODLウェーブのダウントレンドが有効な場合、実質コインの供給はより高年齢へ移行していることを意味する。

 この2つの指標から得られる重要なことは、11月のATH後に蓄積されたコイン保有者は、比較的価格に敏感でないように見えるということである。価格のドローダウンが続き、8万BTC以上の大きなスポットのロスカットイベントが発生したにもかかわらず、彼らはコインを手放そうとはしない。

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 長期保有者(LTH)の閾値が12月下旬にあることを思い起こすと、LTHの総供給量が最近頭打ちになっていることは不思議ではない。ここ数ヶ月、LTHの閾値は11月から1月にかけての下降トレンドに沿って推移していた。

 一般的に、価格帯が横ばいにあるときは、供給が蓄積される。つまり、約1ヶ月後には、LTH基準値は33k~42kドルの間に形成された以前のレンジに入ることになる。URPDプロファイルに基づくと、1月から4月の間に著しく大量の供給がここで獲得された。

 最近、長期保有者の供給量は13.048M BTCのATHに戻った。コインの大幅な再配布が行われない限り、HODLerが供給を徐々に吸収し、保持し続けることを示唆しているため、この供給指標は今後3~4ヶ月の間に上昇を始めると予想される。

ライブチャート

 しかし、このような前向きな見方にもかかわらず、現在コインを売却して損失を出している一部のLTHも残っている。LTH-SOPR指標はLTHコホートが1日に実現する平均利益倍率として見ることができ、1.0未満で取引されることはほとんどない。

 今週は、平均的なLTHが使用したコインが、コイン取得時点と比較して27%の損失を出していることがわかる。過去のこのような出来事は、2015年、2018年、そして2020年3月のような弱気相場の最終的なキャピチュレーションの安値の時にのみ発生している。

ライブチャート

 LTH-SOPRを実現収益倍率の概念と捉えることで、LTHの使用済みコインの平均価格(使用価格、Spent Priceと呼ばれる)は、「どこから」来ているのかによって導き出される。LTHの使用価格(ピンク色)は、市場価格よりも高い値段で取引されることはほとんどないが、現在7日移動平均では$32.8kで取引されている。前回、LTHがこのように損切りしたのは、2020年3月の売り相場イベント後における一時的なものだった。2018年の弱気相場の場合、先行して何ヶ月ものLTHの損失が続き、最終的に価格は50%下落した。

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サマリーと結論

 ビットコインのオンチェーン活動の停滞は2021年9月から続いているが、まだこの軌道修正における兆しはほとんどない。このことが示すのは、最後の砦であるビットコインの買い手であるHODLerはまだ唯一残っているということである。これは、たとえ損失が出たとしても、保有する供給を売却したくないという姿勢として表れている。

 LUNAによる売り相場の後、オンチェーンでの蓄積傾向に著しい変化が起こった。100BTC未満のエンティティは、LFGによって売却されたコインと同等の量のコインを吸収した。大多数の長期保有者とともに、ますます大量のBTCがHODLされ、今の低価格で取得されているように見える。この傾向は、崩壊しない限り、今後数ヶ月間で長期保有者の供給がATHを上回ることが予想される。

 ビットコインが置かれているマクロ環境に目を向けると、デジタル資産と株式の間に起こるデカップリングのシグナルがある。相関性が回復するかどうか、また金融引き締めに反応する市場の最終的な方向性はまだ不明である。非常に大規模なリスクが残っている。しかし、驚くべきことに、価格に敏感でないビットコインHODLerにとってもそれは同様なのである。


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